下垣氏はIODの実現を支援するソリューションを、「情報の管理」「情報の統合」「情報の分析」と体系立て、それぞれの分野での製品展開を説明した。
国内ECM市場へFileNetを本格展開
「情報の管理」では、企業に散らばる非構造化データをどのように管理するかが重要となる。下垣氏が引いた調査結果では、DBにおさめられるなどして構造化されたデータは企業情報の約2割。そのほかの8割がWordファイルやExcelファイル、紙の書類などの非構造化データだという。
特に紙の文書は危険で、「紙でやっていると、どこで改ざんされたかが分からず、法規制に対応できない」こともある。つまり、コンテンツ管理を業務プロセスにどう組み込むかも視野にいれなければならないのだ。
そこでIBMは、国内のECM市場へFileNetを本格展開する。FileNetは昨年7月に国内での販売を開始しているが、文書・帳票の管理という従来の市場の要望が、プロセスとコンテンツの一元管理へと変わりつつあることを踏まえ、IOD戦略の3本柱の1つとして据えられた格好だ。「(ECM)マーケットが今までのまま進むことに耐えきれなくなってきている」(三浦氏)との認識だ。
アプリケーションに近づくミドルウェア
「情報の統合」という点では、Information Server V8.1(日本語版)を6月30日から、InfoSphere MDM Server V8.0(日本語版)を5月23日からそれぞれ出荷する。前者は日本語版としては初めての出荷、後者は新製品となる。
Information Serverは次世代情報統合基盤ソリューションとされており、必要な情報に自由にアクセスする環境を提供するという。下垣氏は、企業の適用業務のデータを利用して新たな適用業務利用を行う際には、データベースを物理的に統合するか、仮想化するかの二通りがあるとする。こうした適用業務は今まで人手でなされてきたが、Information Serverはそれを自動化するというのだ。
InfoSphere MDM Serverは「SOAのデータを管理するコンポーネントの重要なリリース」(下垣氏)。分断された業務システムから顧客情報や契約情報などの価値ある情報を切り離し、企業全体で価値ある情報を一元的に管理・活用できる環境を提供する製品となる。
情報の可視化だけでなく施策の立案も
企業内に散らばる情報を集め、それらを統合した後は、情報を有用なかたちで可視化するツールが必要になる。ここまでくれば「情報の分析」で登場する固有名がわかるだろう。もちろんCognosだ。
業務・経営分析を担うビジネスインテリジェンスに加え、事業活動を監視・評価や問題点の発見、施策の立案までをこなすパフォーマンスマネジメントのソリューションが提供される。この分野についても「業種別ソリューションを準備している」(下垣氏)という。
以上が2008年度の日本IBMのソフトウェア事業戦略とIOD戦略だ。
IOD推進のカギは……
今回の報道陣向け説明会だけでなく、直前に行われた基調講演においても「エンドツーエンド」という言葉が多く聞かれた。これは「情報を管理・統合・分析」することを意味しているという。
エンドツーエンドでIOD戦略を推進するカギとなるのは、やはりCognosだ。そのため、同社はBIソリューションを支援する「IBM BI サポートセンター」を5月1日に設立する。BIサポートセンターではあるが、Cognosソリューションだけでなく、データベースや情報統合など、情報を活用するために必要となる機能をトータルで支援するとしている。
また、IOD戦略においてもパートナー、特にSIerとの協業を強化していく。「(SIerを取り巻く環境は)最近厳しくなっているが、協業を推進することで支援していきたい」考えだ。
三浦氏も「パートナーとのライフサイクルを構築することが必要」との認識で、協業を強力に推し進めていく考えを示している。