情報システムがもたらす機能をサービスとしてとらえ、そのITサービス運用管理の成功事例(ベストプラクティス)をまとめた、ITサービス管理のガイドラインとなっているITIL(Information Technology Infrastructure Library)。日本国内でも企業ユーザーは、ITILを導入推進することで、ITサービスを効率化、あるいはその品質を向上させようと努力している。しかし、ここに来て、日本国内でのITIL導入推進は、当初の目的を果たせずにしまっているようだ。
ITサービス管理ソリューションを提供するBMCソフトウェアの技術本部でソフトウェアコンサルタントを務める松本浩彰氏は、日本国内の企業ユーザーにおけるITIL導入推進の課題として、「実際にビジネスに有効なITサービス価値を提供できている、あるいはうまく標準化に成功している、といった点で有効なユーザー事例が不足している」ことを挙げている。
松本氏は、その原因として(1)ITILについて“知識習得”するレベルからの脱却が図れていない、(2)ITILに関する高度のスキルを持った専門家が不足している、(3)ITILを導入推進する際のグランドデザインの構築能力が脆弱である、(4)ITIL導入推進プロジェクトの推進能力が乏しい――の4つを指摘する。
日本国内でITIL導入推進がうまくいってない、これら4つの原因のうち、(1)と(2)についていうと、ITILの入門的意味あいを持つ資格である「ITILファウンデーション」が日本国内で2万人存在するのに対して、実際にITILを推進するための上級資格である「ITILサービスマネジャー」はわずか200人しか存在していないという。(3)は、ITILを導入推進する際のもともとの目的や方針を確立することができていないということを指している。
BMCソフトウェアでは、こうした認識をした上で、企業ユーザーのITサービス運用を向上させるためには、「人材に関する課題が最優先」として、運用管理エンジニアに向けた教育プログラムを提供することを明らかにしている。
教育プログラムの詳細はまだ明らかにしていないが、まずは受注前の段階で、「企業ユーザーを導くような教育を提供する」(松本氏)としている。ITサービスをどのようにして企業内に提供していくのかという戦略を策定することから教育するとともに、ユーザー企業の戦略とユーザー企業の運用管理フレームワークとの関連性に関した教育、さらには、運用管理のチームワークをいかに形成していくかという教育を提供する。
また、受注後にITIL導入推進プロジェクトを進めていく際にも教育プログラムを展開する。この段階では、プロジェクト戦略に照らし合わせてITILに関する基礎研修、ITサービスをいかにマネジメントしていくかというITILの高度な研修などを提供することになるとしている。
BMCソフトウェアが提供する教育プログラムでは、(1)戦略策定と組織力の強化、(2)戦略に沿った基礎情報の共有、(3)戦略に沿った高度な管理力の育成と専門家の育成――という3つの段階に分ける。この教育プログラムでは、ユーザー企業が置かれている状況から発想した戦略にのっとって、シナリオ性のある教育を展開することが重要としている。
特に、初期の段階である戦略策定では、「日本国内のITIL導入推進プロジェクトで最も脆弱なポイント」(松本氏)である、何のためにITILを導入推進させるのかをはっきりさせるとしている。その上で、ユーザー企業内で基本的な戦略構築の思考プロセスを組織内で共有させるとともに、リーダーからリーダー候補までを対象にしたマネジメント教育をも提供することになると松本氏は説明している。