内部統制:2009年3月期末までに整備が間に合わない企業が20% - (page 2)

田中好伸(編集部)

2008-05-21 21:35

 こうした調査結果をもとに桜本氏は「企業の対応遅れは顕著」と語った上で、「企業の作成した内部統制文書類や企業自身による評価の妥当性自体にも潜在的な問題がある可能性」を指摘する。先のアビームコンサルティングの調査では、外部監査人による予備監査または文書などレビューの実施状況を調べており、そのうち52%が現段階で「実施していない」としている。内部統制が有効であるかどうかの判断は最終的に外部監査人にゆだねられているが、この調査結果から、「これまでの外部監査人のレビューの結果、企業が作成した文書類の大幅な手直しが必要となったケースが少なくないことから、内部統制監査の開始後の手戻り要因となりうる」(桜本氏)。

 また、企業ではこれまでの外部監査人とのやり取りから、海外子会社の監査を誰が実施するかなど、内部統制監査に関連した監査法人の対応方針がいまだに確定していないことにいら立ちを示す企業も多いという。事実、先に挙げた日本監査役協会の調査によれば、外部監査人の内部統制監査に関連した対応方針確定状況では、「ほぼ確定」が24%、「半分以上確定」が32%であるのに対して、「半分程度確定」が21%、「確定は半分以下」が15%、「ほとんど未確定」が8%となっている。つまり、44%が方針が変更する可能性を孕んでおり、「監査法人の方針確定とともに外部監査人の発言が変わってくる可能性を否定できない」(桜本氏)という状況にある。

コストが永続的に企業収益を圧迫

 このように企業のJ-SOX対応はさまざまな課題を抱えているが、アビームコンサルティングのプロセス&テクノロジー事業部プリンシパルの永井孝一郎氏は、今後の大きな課題として「運用コスト」を指摘する。

 外部監査にかかわるコストは監査時間が増えるほどかかることになるが、日本公認会計士協会の試算によれば、J-SOX対応で監査時間は従来の1.8倍に膨らむとしている。特に内部統制リスクの評価時間は従来の2.4倍になるとしている。つまり、それだけ監査コストがかかることになる。

 この外部監査コスト以外に見込まれている大きなコストでは、内部統制評価コストが挙げられる。永井氏は、「現在の企業が考えている平均的な体制の場合、内部統制文書類や業務運用の改善、あるいは再テストまでの工数の捻出は難しい」と指摘。また、評価時には評価者と同数程度の現場側の対応者が必要となるが、「これも評価コストとして見込んでおく必要がある」ことを永井氏は説明している。米SOX法の対応事例を見ると、倍近くの評価工数が見込まれるという。

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