しかし、コストはこれだけにとどまらない。たとえば、組織変更や業務変更、事業拡大などに伴って文書類メンテナンスコストもあり得るし、もちろん情報システムの改善にかかるコストも計上されることになる。また、内部統制強化による追加業務を実施するための時間コストも存在する。
「構築・試行・評価作業が重なることから初年度は大きなコスト負担が発生するとの認識はある」(永井氏)一方で、「実は2年目以降もコストが永続的に企業の収益を圧迫」することは見落とされがちだ。
米SOX法での米国企業の対応コストを調査したものによると、初年度に比べて2年目は16%減少、3年目でも36%減少という。永井氏は、こうした事実から「内部統制コスト負担は将来も大きく軽減されることはない」と指摘している。
また米国の同調査では、米SOX法についての企業の定性評価も調査。その結果によれば、「費用に見合うだけの効果があった」とするのは22%でしかなく、多くの企業が疑問を感じていることが分かる。もちろん、「投資家からの信頼性が向上した」が60%であることから、成果がないわけではない。しかし「財務報告の正確性が向上した」が46%、「財務報告の信頼性が向上した」が48%となっており、「SOX法の当初の目的にかなった効果は半分もない」(永井氏)ことがうかがえる。
連結経営シフトでコスト削減と内部統制レベルの向上
永井氏は、こうした事実を挙げながらももう一つ注目すべきという事実を指摘する。それは、業務を集中管理している企業のSOX法対応平均コストは170万ドルだが、対する分散管理している企業の平均コストは2.35倍の400万ドルになる、というものだ。このことは、「SOX法対応コストの話だけでなく、企業の運営コスト全体でも同じことが言える」という。
「つまり、企業グループ全体で業務の共通化と集中化(シェアードサービス化)をすすめ、企業集団を一つの組織と考えた密結合の“連結経営”にシフトすることが、コスト削減と内部統制レベルの向上を実現する決め手となる」(永井氏)
内部統制は、企業の業務を文書化することで業務の「見える化」を図ることであり、それは業務の標準化・共通化を展開することにつながる。そこから企業は組織連携の強化とシェアードサービス化を実施することができる。そこからは企業が連結経営を全面展開することで企業価値を向上させられるという図式が浮かび上がってくる。