スーパーでは、野菜、鮮魚、精肉、惣菜、レジという導線で店内を隅々まで見渡せるようになっているし、アパレル店舗では店員が積極的にオススメ商品を薦めている。熱心な店舗では顧客の年齢や装いによって素早く展示商品を入れ替えるところもある。このように、直接顧客に接する機会のあるリアル店舗では当たり前となっている顧客導線や接客というマーケティング手法を活用しつつ、ECサイトならではの自動化を実現するのがレコメンド技術なのだ。
実際の導入効果はいかに?
さて、導入の結果どのような効果が期待できるかを、実例を挙げて紹介しよう。2006年12月にパーソナライズド・レコメンダーを導入した某グッズのECサイトでは、以下のような結果が出た。
このECサイトは年々PV数、訪問者数共に5〜10%の成長を遂げていたが、商品購入率が改善されなかったためレコメンド機能の導入に踏み切った。一見しただけでも2007年の成長は明らかだが、注目すべきは訪問者数の増加に対してPV数やカート投入率、商品購入率が大幅に伸びている点だ。
数値からもわかるように、レコメンド機能の導入後は1人あたりの平均PV数の増加が顕著だ。商品詳細ページのPV数や構成比が増加していることからも、レコメンド機能がユーザーの回遊を促し、より多くの商品詳細ページを閲覧させるようになったことがわかる。
さらに、直接的な要因とは特定できないが、結果として商品購入率が上がり、商品詳細ページの直帰率が改善された。レコメンド経由からの商品詳細ページPV数やカート投入に至った率、購入に至った率を見ると、レコメンド機能が大いに影響を与えていると考えても良いだろう。
ほかにも、某オンラインゲームのアバターショップにて導入前後の月を比較した場合、導入後に購入者数が24.7%増となった例もある。このサイトでは、売上も導入前の4週間と比較して13.6%増加した。コンバージョンレートは、通常で2%、メールマガジンが4%であるのに対し、レコメンダーを通した場合は平日で7%、週末で10%にも上っている。
また、レコメンド技術はECサイトにとどまらず、ニュースやカタログなどの情報ポータルサイト、さらには人材転職サイトなどでも利用されている。例えば、レコメンド技術を導入した某情報ポータルサイトでは、サイト全体のPV数が2006年の120万PVから2007年には175万PVと45%増加し、商品詳細ページへの遷移が30%から50%に増加した。さらに某物件サイトでは、導入後の2カ月間の総PV数が前年同期と比べて1.4倍となり、商品詳細ページのPV数が2.1倍となった。
次回でこの連載も最終回だ。最終回では、今後のレコメンド技術の展望について触れたいと思う。
筆者紹介
高島理貴(たかしま まさき)
ケイビーエムジェイ インターネットプロダクト&マーケティング事業部 プランニング&コンサルティング グループ アクセス解析チーム チームリーダー Newビジネス企画 担当。埼玉県生まれ。年間総計30億ページビュー以上のサイトを解析し、クライアントのサイトの成長をお手伝いするアクセス解析コンサルタント。