仮想化をテーマとしたイベント「VMWorld 2008」にて、Virtual Datacenter OS(VDC-OS)という新しい製品カテゴリーを発表したVMware。こうした同社の姿は、以前に比べてよりいっそうマーケティングに注力しているように見える。この筆者の意見に対し、VMware 製品マーケティング シニアディレクターのBogomil Balkansky氏は「それは正しい見解だろうね」と話す。「今までVMwareではあまり将来のことについて語ることはなかった。しかし今では、こうしたことが重要になってきたのだ」(Balkansky氏)
なぜVMwareにとって将来を語ることが重要になってきたのか。それは、「VMwareを頼りにしている顧客数が増えているからだ」とBalkansky氏。「顧客は、来年の予算を前もって立てなくてはならない。その際に、VMwareが今後どのような製品を出すのかを知り、それを導入すべきかどうかを検討するためにも、VMwareの方向性をできるだけ早く知りたいと考えているのだ」(Balkansky氏)
VMwareが新しく発表した製品群の中でも、同社の中核事業となるデータセンター全体の仮想化を実現する製品がVDC-OSだ。これは、現在「VMware Infrastructure」と呼ばれる仮想インフラストラクチャスイート製品を、「データセンター用のOS」として新たに分類したものだ。

なぜここで「OS」という言葉を使うのか。Balkansky氏は「OSとは、ハードウェアとソフトウェアをつなぐもの。VDC-OSは、サーバとストレージ、ネットワークというインフラをひとつの大きなリソースとし、アプリケーションにつなげるものだ」と説明する。このように、WindowsやLinuxなどのOSと同じ働きをしているとして、VDC-OSが「OS」そのものであるとした。
ただし、WindowsやLinuxとVDC-OSには大きな違いがある。それは、「WindowsやLinuxは、1台のサーバ用に作られたOSに過ぎない」(Balkansky氏)ということ。VDC-OSは「データセンター全体のOS」なのだ。「VDC-OSは、x86サーバをベースにメインフレームを作り上げたようなもの。サーバが1台動かなくなっても、隣のサーバがカバーする。VDC-OSを利用したシステムは、柔軟性に高く、自己修復型のシステムになる」(Balkansky氏)
VDC-OSは、WindowsやLinuxを置き換えるものではないという。たいていのアプリケーションはWindowsやLinux上で稼働するように開発されているため、「こうした単体サーバ用のOSは今後も必要だ」とBalkansky氏。ただ、VMwareのCEO、Paul Maritz氏が「新しいアプリケーションの中にはOSが重要ではない、または必要がないといったものも出てきている」と述べているように、WindowsやLinuxの位置づけが変わってくる可能性はある。
「VMwareのゴールは、どんなアプリケーションでもサポートすることだ。WindowsやLinuxを必要とするアプリケーションはもちろん、その他のOSが必要なアプリケーションも、OSを必要としないアプリケーションも、VDC-OSの上では動くようにする」(Balkansky氏)
8月末にはVMwareがRed Hatの買収を検討しているとのうわさも出たが、上記のような理由からBalkansky氏は「単体サーバ用のOSがわれわれの戦略の中心になることはない」として、VMwareがRed Hatを買収するメリットはないと述べた。