マイクロソフトは10月2日、学術研究、製造、金融といった高い演算処理能力を必要とする分野向けに、Windowsによるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)環境を提供するプラットフォーム製品「Windows HPC Server 2008」日本語版の提供を開始すると発表した。
HPC Server 2008は、マイクロソフトが2006年にリリースした「Windows Compute Cluster Server 2003」の後継製品。64ビット版のWindows Server 2008に、HPC環境向けに特化した管理ツールや開発アドオンをセットにした「Microsoft HPC Pack」を組み合わせた構成になっている。
発表会に出席した、Microsoftハイパフォーマンスコンピューティング担当ゼネラルマネージャーのKyril Faenov氏は、同社の目指すHPC環境のキーワードとして「複雑性の低減」「大衆化」「並列アプリケーションを普及させるための開発者支援」などを挙げた。従来、LinuxやUnixなどがOSの主流で、かつシステム固有のアーキテクチャによって開発や運用にノウハウが必要とされていたHPC分野に対し、既存のWindowsプラットフォームの管理スキームや開発手法を利用可能とすることで、より広く食い込みたい考えだ。
HPC Server 2008では、NetworkDirect RDMAと呼ばれる高速ネットワーキング技術が新たに搭載されているほか、大規模ノードの作成や管理のための機能が従来の製品と比較して大幅に強化されている。また、SOAベースで相互運用性を確保した新たなジョブスケジューラでは、ノード、ソケット、コアといった詳細なレベルにおいて、ポリシーベースのジョブコントロールを可能にしている。分散処理アプリケーションの開発にあたって、Visual Studio 2008の統合開発環境を活用できる点もメリットのひとつだ。
HPC Server 2008日本語版のボリュームライセンスにおける参考価格は、Open Business Licenseが9万1400円、Open Business License&Software Assuranceが13万7000円、Open Business Software Assuranceが4万5700円、Academic Open Licenceが1万3500円(いずれも税別)。
マイクロソフト執行役常務ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン氏は、日本市場において、今後HPCの普及拡大に向け、対応アプリケーションやハードの拡充、パートナー各社との検証センターの推進、産学連携の推進といったエコシステムの構築を加速させる方針を示した。市場としては、成長領域として特に金融分野に注力するという。
発表会にはゲストとして、伊藤忠テクノソリューションズ取締役兼常務執行役員金融システム事業グループ担当役員の藁品至徳氏と、東京工業大学学術国際情報センター教授の松岡聡氏が招かれた。藁科氏は、HPC Server 2008のライセンス価格について「非常にアグレッシブな価格設定」と評価。松岡氏は2010年の稼働が予定されている、東京工業大学のスーパーコンピューティングシステム「TSUBAME 2.0」においてWindows HPC Serverを本格採用し、ペタフロップス級の性能を実現する計画があることを明らかにした。