ブログの価値は今でも高い
ただし、ソーシャルメディアが多様化したとはいえ、ブログの存在価値が低くなったのかといえばそうではない。多様化してきてたからこそ、「コミュニケーションの組み合わせ方によってブログは今まで以上に重要な存在になる」と関氏は言う。
インターネットはコンテンツのコントロールが難しく、従来のマーケティングに比べてリスク管理が難しいが、ブログを立ち上げることである程度コントロールが可能となる。さまざまなサイトで異なるメッセージが行き交うのではなく、公式ブログ上でコミュニケーションができれば一貫性を保つことができるのだ。また、ブログのアーカイブを残すことで、知識を未来の財産として生かせるメリットがある。
現在はSNSの利用者数の伸びが著しく、ブログの利用者数は停滞しているとも言われるが、関氏はこの点に疑問を投げかける。「単純にSNSの登録者数とブログの数だけを比較すれば、ブログの伸び率が停滞しているように見えるかもしれない。しかし、ブログにもブロガーと読者という独自のネットワークが存在している。あるブログの単独記事のためではなく、書いている人そのものに興味を持ってブログにアクセスする読者も少なくない。ブログの読者はSNSのようにプロフィールページを持たないため、ブログユーザーとして数えられていないが、こうした読者も含めるとブログは独自のソーシャルネットワークを持っていると言って良い」（関氏）
ブログでは、ブロガーと読者、ブロガーとブロガー、また読者と読者の間でコメントやトラックバックなど、さまざまな活動が行われている。SNSの利用者もブログと同様の行動を取っているが、閉じられた環境であるがゆえにブログのような広がりと活性化が起こりにくいのではないかと関氏は指摘している。
ブログとSNSの一体化
ブログにソーシャルネットワーク的な機能を実装し体現しているのが、シックス・アパートが提供する「Movable Type 4.2」のコミュニティ機能や「Vox」のような人にフォーカスしたブログサービスだ。これらは、多方向に情報発信できるだけでなく、RSSやXFN（XHTML Friends Network）などのデータ形式で情報が再利用できるというブログの特性と、SNSのようなプロフィール機能を組み合わせ、ブログにも存在するネットワークを見える化している。このようにシックス・アパートは、SNS的要素をブログに組み合わせることで、ブログとSNSは比較する対象ではなく一体として考えるべきだという姿勢を示している。ネットワークをつなげるためのひとつのツールがブログであり、Movable TypeやVoxが提供する機能なのだ。
ブログの重要性を語る際、関氏は「ブログとブランド構築のプロセスは似ている」と指摘する。「ブランドイメージは短期的に行われるキャンペーンで作られるのではなく、提供している製品やサービス、カスタマーサービス、さらには企業で働く人々によって徐々に形成されていく。ブログなどを使ったソーシャルマーケティングも、ブランドと同じく長期的なビジョンを持って取り組まなければならない」と関氏。アーカイブが検索可能であるというブログの特性を生かし、コンテンツの再利用を前提にブログを活用することが持続的に効果を上げる秘策なのだ。
社内でブログを持つ場合も、情報共有という身構えた姿勢で取り組むのではなく、部署間の風通しを良くするために使うのがソーシャルメディアを理解する第一歩だ。情報交換やアイデアを出す場は、プロジェクト管理システムではなく、昼休みやデスクでのちょっとした会話から始まる場合が多い。そういったカジュアルな対話をいかにブログ上で体現し、内外とコミュニケーションを取っていくかがソーシャルメディアの重要性に気付くひとつのきっかけになる。ソーシャルマーケティングは今後伸びて行く分野であるからこそ、今から長期的なビジョンをもって取り組む必要があるだろう。
