そしてアメリカという国が過去の歴史を経てひとつになり、現在の苦難に打ち勝ち、次の世代に素晴らしい世界を継承するのだという意味を込めて、Obama大統領は最後に力強くこう言いました。
Let it be said by our children's children that when we were tested we refused to let this journey end, that we did not turn back nor did we falter; and with eyes fixed on the horizon and God's grace upon us, we carried forth that great gift of freedom and delivered it safely to future generations.
子供から子供へ言い伝えられるようにしようではないか。我々が旅の終結を拒むのか試された時、ふり返ることなくなく、尻込みすることなく、地平線と神の慈しみをしっかりと見つめ、自由という偉大な贈り物を未来の世代に無事に届けたということを。
まさにリーダーとして素晴らしい演説だったと思います。次の世代へ贈り物を届けるという表現に、私は特に感動しました。
真の自由とは
演説の途中で、Obama大統領が真の自由の意味を述べる時、自らの人種をほのめかす表現をした部分がひとつだけありました。60年以上前には「田舎のレストランで食事をすることすら許されなかった父親を持つ男」と自分を表現したのです。
This is the meaning of our liberty and our creed... 一部略 ...why a man whose father less than sixty years ago might not have been served at a local restaurant can now stand before you to take a most sacred oath.
これが、自由そして信念の意味するところだ。なぜ60年以上前には田舎のレストランで食事をすることすら許されなかった父親を持つ男が、最も神聖な誓いをするために皆さんの前にたつことができたのか。
個人的な話ですが、昔アフリカ系アメリカ人の親友が、自分のおじいちゃんが差別に抗議するため白人のバーに行って殴り殺されたと泣きながら話していたのを思い出し、涙が止まらなくなりました。Obama大統領の言う「本当の自由」が実現されてほしいと心から思いました。
Obama大統領の演説は、差別というアメリカのダークサイドにある深い傷がいたるところで表現されると共に、苦難を力強く乗り越えようとするアメリカの姿が感じられるものでした。ちなみに、宣誓に用いられた聖書は、第16代大統領Abraham Lincolnが1期目の就任式で使用した聖書です。Lincolnが、南北戦争での奴隷開放宣言（Emancipation Proclamation）で偉大な解放者（the Great Emancipator）として奴隷解放を行ったことを知っていれば、その意味の深さが分かるのではないでしょうか。
Peace out,
Eric
筆者紹介
エリック松永（Eric Matsunaga）
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科（修士）卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT＆Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。
イラストレーター： まつなが みか
つぶやく日本人や音楽にまつわる「人」のイラストを描く。CDジャケット、ショップ、雑誌等で活動中。エリック松永の愚妹。
