「HPは全社一丸となってクラウドコンピューティングを推進する」……日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2月9日に記者発表会を開催。同社、執行役員エンタープライズストレージ・サーバ事業統括の松本芳武氏は、冒頭でこのように述べ、同社がこれまで自社内で展開したり、他社のクラウドサービス構築にかかわって得たノウハウを元に、企業に対してクラウドコンピューティング実現のためのソフトウェア、ハードウェア、サービスを包括的に提供していく方針を明らかにした。
クラウド環境を意識したソフトウェア、ハードウェアの新製品を投入すると共に、クラウドコンピューティングの実現をミッションとした全社横断のタスクチームを組織。無償のアセスメントサービスに基づいて、顧客に包括的なソリューションを提案していくという。
HPでは、大規模企業が自社内で展開するクラウド的な要素を持ったITサービスを「インターナル・クラウド」、主にSMB向けにインターネット上で提供されるサービスを「エクスターナル・クラウド」と呼んでいる。インターナル・クラウドについて、同社では2005年以降、ITインフラの最適化を目的として、それまで86カ所あったデータセンターを6カ所に集約するという取り組みを行っている。また、システムビルダーとして、コンシューマーやSMB向けのクラウドサービスに関わった経験も持つ。クラウドをITインフラの側面で見た場合、そこで重要なのは「ITリソースを標準化し、統合し、共有できる形で配備し、解放するという一連のスムーズなサイクル」だったという。
「こうした考え方は、HPがこれまで“アダプティブ・インフラストラクチャ”として目指してきたものと同じ。今後、企業のITプロフェッショナルには、社内、ホスティング・アウトソーシング、クラウドの中から、いかに最適なITリソースを調達し、提供するかを見極める力が求められる」(松本氏)
クラウド実現のための新製品群
同日、日本HPはクラウド実現を目指した新製品群を発表した。運用管理ソフトウェアの「HP Insight Dynamics - VSE 4.1」「HP Insight Orchestration」「HP Insight Recovery」そして、ラックマウント型x86サーバの「HP SE2120」だ。
「HP Insight Dynamics - VSE 4.1」は、クラウド環境における仮想サーバと物理サーバを統合して可視化し、管理するためのソフトウェア。リアルタイムでのキャパシティプランニングや論理サーバを物理サーバと仮想サーバの間で自由に移動することが可能。また、「HP Insight Orchestration」は、インターナル・クラウドでの利用を想定した、ITサービスの配備システム。サービスをテンプレートとして設計しておくと、ユーザーの要求に応じて、リソースプールから迅速にシステムを構築して提供できる。「HP Insight Recovery」は、複数のデータセンター間でリソースを共有し、災害時などに即時でリソース切り替えを行うための製品だ。
「HP SE2120」は、大規模スケールアウト環境向けのx86ラックマウントサーバ。「クラウドプレイヤーのニーズに合わせた日本独自仕様の製品」という。日本HP、エンタープライズ ストレージ・サーバ事業統括ISSビジネス本部ビジネスデベロップメント部部長の正田三四郎氏によれば、特に日本のクラウドサービスを提供する企業には、マルチベンダー混在環境において、ブレードシステム特有のベンダー依存性や高い管理コストを避けることを目的に、ラック型サーバを求めるケースが多いという。さらにフリー系Linuxのサポート(CentOSの有償サポートやフリー系Linux検証結果の提供)や、消費電力の低減、独立型の電源ユニット、単体での可用性、メンテナンス性の向上といった形で、ユーザーニーズに応えているとする。
価格は、「HP Insight Dynamics - VSE 4.1」は、ProLiant向けが15万7500円より。Integrity向けが10万5000円より(いずれも2月9日出荷開始)。「HP Insight Orchestration」が9万4500円(3月上旬出荷開始)。「HP Insight Recovery」が11万5500円(3月上旬出荷開始)。「HP SE2120」が、Intel E6405、2Gバイトメモリ、250GバイトHDDの2ノード標準構成で、37万8000円(今春発売予定)。
日本HPでは、合わせて、クラウドコンピューティングに対応した無償アセスメントサービス「アダブティブ・インフラストラクチャ成熟度モデル Ver.2」の提供も開始する。企業のITインフラ構築に関して、「こうあるべき」というto-beモデルを策定するためのアセスメントサービスで、コストセンターとしてのITをプロフィットセンターに変革することを目指すもの。「成熟度」は、ITシステムがサイロ化された状態(ステージ1)から、標準化、最適化、自動化・サービス指向の段階を経て、適応型インフラ(ステージ5)までの段階に分けられており、Ver.2では、「仮想化」「自動化」「運用管理」といった側面でクラウドコンピューティングに対応したレポーティングを行うほか、消費電力やカーボンフットプリントを意識したアセスメント項目を追加し、「グリーンIT指標」を新たに提示するという。