FCoE/CEEの動向
FCoEやCEEの関連技術は、2009年中を目処に規格化が完了する見込みである。では2010年以降、FCoEやCEEは一気に普及していくのだろうか。
前述の通り、データセンターにおけるネットワークの統合へのニーズは強い。ただ一方では統合を妨げる、あるいは統合を必要としない部分も存在する。たとえば、以下の通りである。
- IP系の通信を中心としたLANに求められる帯域は、ますます大きくなっている。このため、今後さらにCEEが広帯域化した場合は別として、現時点ではストレージI/Oは分離しておきたいというニーズは根強い
- CEEのメリットは主にサーバ側に存在する。なぜなら現在、サーバはNIC(Ethernet)、HBA(FC)、HCA(Infiniband)など、さまざまなネットワークインターフェースを搭載しているからだ(図13)。一方ストレージ側では、FCoE/CEEに対応するメリットを見出しにくい
- 高速・大量のアクセスが必要なテープライブラリや映像系のトラフィックなどでは、Ethernetに比べて帯域の使用効率に優るFCの方が、使用するメリットが大きい
- そもそも“統合”する必要がないメインフレーム環境では、FICON(メインフレームとストレージを接続する高速の入出力インターフェース)が引き続き使用される
上記の理由などから、CEE/FCoEは実際には緩やかに普及していくと予想される。当面はEthernetとFC(SAN)が並存し、両者を「FCoEスイッチ」でつなぐ形態が中心となるだろう(図14)。CEEとその上位で使用されるFCoEの動向については、Ethernetのさらなる広帯域化などとも合わせて、今後も注目していただきたい。
CEE/FCoEでもFCであっても、将来のデータセンターのネットワークには“インテリジェント”が求められるようになるだろう。これはネットワークがさまざま機能をもち、そこに接続されるサーバやストレージ、さらにはその上で動作するアプリケーションなどと連携して、さまざまなサービスを提供するものである。インテリジェントなネットワークでは、たとえば以下のような機能が提供されるようになる。
- End-to-Endのトラフィック制御
さまざまな種別のトラフィックに対応し、それらを優先度に応じて適切に処理できなければならない。またこれはネットワークレベルだけでなく、サーバやストレージも含めた「End-to-End」で実現されなければならない - End-to-Endのセキュリティ
ネットワークへのアクセスに対して、適切なセキュリティを確保できなければならない。またデータの暗号化に対しても考慮する必要がある。これは通信トラフィックを暗号化する技術と、ディスクもしくはテープ装置に格納されるデータを暗号化する技術に大別される - ネットワークを通じた「モビリティ」
ネットワークレベルでアプリケーション、サービス、データのモビリティ(可搬性)を確保できることが求められる。たとえばストレージ間で柔軟にLU内のデータを移動する技術などである - サービスの「プロビジョニング」
サービスのプロビジョニング技術も今後は求められる。たとえば仮想サーバのトラフィックに対してある一定の閾値を設定しておき、その閾値を超えた場合には別のルートにトラフィックを自動的に変更するといった技術である
ネットワークがこれらの機能を提供し、さらにはそれが自動的に実行されることで、データセンター内のサーバ、ストレージ、ネットワーク、アプリケーションといったIT資源の管理レベルは飛躍的に向上する。次世代のIT管理者にはさまざまな要素技術を連携させて、“トータルコーディネート”したうえでサービスを提供する能力が求められる。これはまさにオーケストラの指揮者のようであり、このようなサービスを「オーケストレーションサービス」という(図15)。
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5回にわたって続けてきた、この連載も今回が最終回である。これまでの記事の内容が、読者の皆様が今後サーバやストレージ、さらにはネットワークインフラを検討、構築するうえで参考になれば幸いである。