日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、8月1日付けでEDSジャパンとの統合を完了したことを発表。日本における今後の取り組みなどについて説明した。
日本HPの社内に、EDS事業統括部門を新設し、EDSジャパンから数100人規模の社員が移籍した。EDS事業統括部門には、「アプリケーションサービス統轄本部」「ITアウトソーシングサービス統括本部」「マネージドサービス」「EDS営業」「EDS事業戦略」の各組織を配置する。また、EDSジャパンが行っていたサービスのうち、インフラサービスに近い領域では、一部がテクノロジーソリューション事業統括部門の中に移管された。
日本HP、執行役員EDS事業統括の村上申次氏は「3年後には、サービス事業の売り上げ規模を2倍にまで拡大する計画」とした。
具体的なサービスとして挙げられたのは主に次の3つ。データセンターやネットワークをはじめとするITインフラを対象とした「インフラストラクチャアウトソーシング」。システムの可視化やビジネス優先度に合わせたIT投資やサービスを提供できるアプリケーションの開発などを行う「アプリケーションサービス」。そして、経理や総務、CRMなどのビジネスプロセスを設計・運用するとともに、製品、サービスのタイムリーな提供によって、ビジネス展開の加速や新たな収益源の創出をサポートする「ビジネスプロセスアウトソーシング」である。
これらを、「消費財・小売」「エネルギー」「医療・医薬」「金融」「運輸」「通信・メディア」「製造」「政府・公共」の8つのインダストリーに対して展開していくという。
米HPは、2008年8月26日に米EDSの買収を完了しており、それにあわせて各国における統合作業を進めてきた。この統合により、HPの全世界の社員数は17万2000人から、31万2000人に増加。売上高は2007年度実績で1043億ドル(10兆4000億円)から、1264億ドル(12兆6000億円)に拡大。さらに、サービス事業の売上高は1兆6600億円から、3兆8700億円に増え、サービス事業の売上高構成比は16%から30%にまで一気に拡大する。ITサービス市場における世界シェアは7%となり、IBMの10%に次いで、世界2位の規模になる。
同社では、EDSが持つ各業界におけるITライフサイクル全般に渡るサービスノウハウを活用し、「ビジネス課題を解決するために、お客様の業種に特化したきめ細かなソリューションを提供」「ビジネス環境の変化に迅速に対応できるように、柔軟性、可視性などを持ったITに変革する“ITトランスフォーメーション”を支援するアプリケーションおよびインフラストラクチャのモダナイゼーション」「TCOの極小化、投資効率の極大化を実現するITマネジメントサービスの提供」の3点に取り組むとした。
会見では、EDSが展開するサービス事業において中核となるITトランスフォーメーションについても説明。「アプリケーションとインフラの領域において、アセスメントおよびモダナイゼーションを展開することで、ITの環境を分析し、リホストの提案、パッケージの適用、アプリケーションの停止などを実施。さらに運用、保守へとライフサイクル全般についてのサービスを提供できる。モダナイゼーションはHPが差別化できるユニークな取り組み。あるユーザーにおいては、イノベーションコストが28%、メンテナンスコストが72%であったものが、イノベーションコストを55%にまで引き上げた事例がある」(村上氏)などとした。
また、アプリケーションモダナイゼーションに関しては、全世界に専門性を持った要員を配置。これを専門ごとに最適化した形で地域集約することにより、デリバリの迅速化、ノウハウの共有化や専門性の向上などを図っているという。
「EDSがモダナイゼーションに取り組むことができる背景には、全世界のビジネスパートナーと共同で、テスティングセンターを設置し、アプリケーションなどの検証を行っている点が挙げられる。これにより、動くSOAを実現するフレームワークを定義できる」とした。
日本においては、2009年5月から、AMod(Applications Modernization Services)の展開を準備。海外からスペシャリストを招聘(しょうへい)して、日本におけるデリバリ体制を整備している。すでに第1号ユーザーとなる消費財メーカーに対しては、わずか6週間でアセスメントフェーズを終了。そのほか7〜8月にかけて、製造業など3社のユーザーに対してサービスを実施しているという。
村上氏は「日本HPの長年の顧客との接点を活用することで、サービス事業の売り上げ規模拡大を加速させたい」とした。