ネットスイート、富士通とクラウド分野で提携--日本におけるERPプロバイダーの地位獲得へ

大河原克行

2009-08-05 17:45

 ネットスイートは8月5日、富士通および富士通ビジネスシステム(FJB)と、販売、サポートに関する包括的業務提携を発表した。

 会見には、NetSuite米国本社社長兼CEOのZach Nelson氏のほか、8月4日付けで日本法人の代表取締役に就任した田村元氏も出席し、同社の事業方針について触れた。

 富士通およびFJBとの提携では、両社のSaaSおよびERPビジネスの実績やノウハウを結集し、中小企業、中堅企業を対象に、「NetSuite-Release J」を提供。導入時のインテグレーション、コンサルティング、サポート・サービスをワンストップで対応できる体制を構築する。

 3社は、定期的に「マーケティングラウンドテーブル」を開催し、ターゲット市場の検討や提案テンプレートの作成、プロモーションなど、国内市場向けのマーケティング活動を共同で実施する。また、米NetSuiteのサービス開発部門とともに開催する「開発ラウンドテーブル」において、国内市場特有のニーズを集約し、日本向けサービス機能の提供およびサービスレベルの向上に取り組む。

 富士通およびFJBが持つ業務・業種ノウハウを活用したソリューションカバレッジの拡大、ネットスイートが持つSaaSビジネスモデルを活用することでのSaaSビジネスの立ち上げの加速、富士通の中堅・中小企業向けERPソリューションの強化を図れるとする。

NetSuiteと富士通、FJBの業務提携 ネットスイートは、富士通およびFJBとの提携により、日本向けサービスの充実とソリューションカバレッジの拡大を目指す

 田村氏は、「日本国内における大手SIとしては富士通が最初にクラウド型ERP製品を扱う企業となる。これれまでにもFJBは販売パートナーとして製品の評価を行ってきた経緯があり、その結果、富士通にも提携を拡大した。これにより、ネットスイートは、日本におけるクラウドコンピューティングの拡販を強化できる」とコメント。また、Nelson氏は、「企業間だけのメリットに留まらず、業界全体にとっても重要な出来事。ソリューションプロバイダーとしての信頼性が高まり、日本におけるクラウドビジネスの強化が行える。日本の市場に対して、ワールドクラスのSaaS製品の販売、サービス、サポートの提供が可能になる。これにより、日本におけるクラウドコンピューティングの状況はすっかり変わるだろう。富士通とは、今後日本以外のリージョンでの提携も探っていきたい」とした。

 3社では、今後3年間で500社の顧客獲得を目指すとしている。

先行投資ステージから成長ステージへ

 一方、日本における事業戦略については、「ネットスイート日本法人を2006年に設立して以来、これまでの期間は日本市場への先行投資のステージだったが、今後は大きな利益をもたらす成長ステージに転じる」とし、パートナーモデルのさらなる強化、拡充を図るとともに、日本市場向けにローカライズしたSaaS型ERPスイート製品「NetSuite-Release J」の拡販、日本企業に対するSaaS型統合業務ソフトウェアを用いた経営革新実現の支援を行うとしている。

 新社長に就任した田村氏は、J.D.Edwards、Baan Japan、大塚商会などを経て、グロービア インターナショナルの日本法人に移籍し、同社の経営に9年間携わった経験を持つ。その後、SAPジャパンでマーケティングおよびカスタマーイノベーションセンター担当バイスプレジデントとして活躍。ERPビジネスにおいては20年近い実績がある。

 新社長となった田村氏は、「ネットスイートは、企業規模に依存するのではなく、大手企業、中堅企業、中小企業および新規設立企業において、クラウドやSaaSとしての新たな利用方法を提供するものである。大手企業ではワールドワイドを含めた巨大なエンタープライズシステムとしても提供できる。富士通との提携によって、それを加速することができる」などとした。

 一方、Nelson氏は、「1998年に、オラクルの創業者であるLarry Ellisonによって設立されたNetSuiteは、10年間に渡り、ネット上で利用できるアプリケーションを進化させてきた。例えば、SAPを活用しているユーザーも、NetSuite OneWorldを部門単位で利用することにより、SAPの資産を最大限に活用することが可能になっている。また、グリーンにおけるメリットも大きく、NetSuiteの顧客は、昨年度だけで6100万ドル以上に相当するエネルギー消費を削減している。今ではオンプレミスソフトを除いて、ERPプロバイダーとして世界最大規模となっている。2008年度の売上高は1億5200万ドルに達しており、3期連続での黒字を達成している。2009年度第2四半期には、270社の新規顧客を獲得している。厳しい経済環境の中、これだけのユーザーが移行を決めたのはNetSuiteが評価されていることの証である」などとした。

 また、日本におけるデータセンターの設置については、「現時点では、そこまでのキャパティが必要とされていないため設置していないが、日本でのユーザー数の増加、要求に合わせて、設置を検討する必要が出てくるだろう。その際には富士通のようなパートナーと提携することも考えていくことになる」とした。

Zach Nelson氏と田村元氏 米NetSuite社長兼CEOのZach Nelson氏と、日本法人新社長に就任した田村元氏

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