電機大手2009年度Q1決算で新聞各紙が強調した「回復感」をうのみにできない理由

大河原克行

2009-08-17 09:30

 電機大手各社の2009年度第1四半期(2009年4〜6月)決算は、これまでの最悪期を抜け出したことを示す内容となったが、決して手放しで喜べるものではない。

 大手9社が発表した第1四半期の売上高は全社が前年割れの実績。そして、最終損益は、すべての企業が赤字という状況。それでも新聞各紙が明るい論調で記事をまとめたのは、営業赤字幅や、最終赤字幅が当初の計画よりも大幅に縮小したため。パナソニックなど3社が上期業績見通しを上方修正。富士通は通期業績見通しまで上方修正してみせた。

 赤字縮小の背景としては、ソニー、東芝、パナソニックのように、固定費削減が当初計画を大きく上回る形で推進されていることや、日本国内ではエコポイント効果があり、その影響が最も大きかった薄型テレビを持つ電機各社の業績が回復したことが挙げられる。

 だが、この勢いが電子部品や半導体にまで影響するには至っておらず、この点では「まだら模様」といえる。さらに、薄型テレビ事業も、海外における需要回復の本格化が遅れており、テレビ事業全体の営業損益は、赤字から脱却できていないのが実状だ。パナソニック、ソニー、シャープがエレクトロニクス事業の顔となるテレビ事業においては赤字のままであり、依然として「黒字回復は来年度以降」というコメントを変えない状況は、決して手放しに評価できるとはいえない。

 一方、IT分野を主力とする富士通とNECも、当初見込みを上回る業績となったものの、やはりユーザー企業のIT投資抑制の影響が重くのしかかっている。

 富士通は、コスト抑制のためのシステム間連携や、インフラ統合への投資、コンプライアンスやセキュリティ対応、環境投資案件などのほか、サービス分野ではアウトソーシングサービスが堅調に推移した。SIも公共分野などが好調だったが、自動車産業、金融分野といった、得意とする領域でのビジネスが減少。サービス事業全体では減収減益という結果になったほか、サーバ製品などのシステムプラットフォーム事業も減収減益。日米欧のIT投資抑制の影響を受けて、同事業は赤字となった。パソコンも企業の投資抑制を受けて減収だ。

 また、NECは、セキュリティ関連製品は堅調に推移したものの、前年同期にメインフレームの大型商談があった反動もあって、サーバビジネスは大幅な減少。ITサービスは官公庁向けや流通業向けが堅調であり、アウトソーシング案件が増加したものの、全般的な投資抑制の影響受けて売上高は減少。ITサービスの赤字脱却までは、あと1億円というところまで回復したものの、黒字転換はならなかった。パソコンも企業向けを中心に需要が低迷。出荷台数は19%減の50万台と大幅な前年割れとなっている。(関連記事:NECの2009年第1四半期決算、景気悪化の影響で売上高が22.3%減

 両社に共通しているのは、下期からのIT投資意欲の回復を見込んでいることだが、幹部の声を聞くと、下期に関しても、かなり慎重な見方をしているというのが本音だ。

 クラウドへの関心の高まりなどもあり、収益性の高いサービス事業の回復が一歩リードしていることは明るい材料だが、サーバをはじめとするハードウェアプロダクトは、引き続き価格競争の激化が見込まれ、収益性はこれからますます悪化すると見ている。

 特に富士通の場合、戦略的に出荷台数を増やす計画を掲げており、ある程度の収益性の悪化は折り込み済みであろうとの見方がある。

 こうしてみると、新聞報道のような明るい論点だけではないのが、第1四半期の電機大手の決算ということになる。特に、ITを主軸とする企業は、今後の成り行きをかなり慎重に見ている。まだまだ予断を許さない。

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