新年あけましておめでとうございます。今年も本コラムをよろしくお願いいたします。
2009年末、何人かのIT産業の関係者に、2010年の展望について見通しを聞いた。共通した意見は「経済環境の不透明感は2010年も依然として続き、全く出口が見えない」というものだ。下期には景気回復の兆しが見えるとの期待感はあるものの、やはりそれは期待感でしかない。
昨年も年初には同様の声が聞かれたものの、その当時は、リーマンショックの影響がここまで長期化するとは思っていなかったという反省もあり、慎重ぶりは昨年以上だ。
世界景気は「すでに底を打った」と言われるが、IT投資意欲の回復にはまだ時間がかかっているというのが実感であり、楽観的な見通しは業界関係者の中にはないのが実態だ。
一方で、2010年はクラウドコンピューティングが本格化する1年になるというのも、やはり共通した意見だ。
事業規模としてはまだ小さいが、パブリッククラウド、プライベートクラウド、そしてこれらを融合したハイブリッドクラウドを問わず、具体的なサービスが続々と開始されることになり、ベンダー、プロバイダー、SIerにとっても、ビジネスモデルの再構築、変革に挑む1年になるだろう。
ところで2010年は、一般的に「寅年」といわれるが、十干に十二支を合わせた数え方では、今年の干支は「庚寅(かのえとら)」となる。
それをふまえて、日本IBM社長の橋本孝之氏が、こんなことを言っていたのが印象的だ。
「庚には、前年にまいた種を伸ばす、やってきたことを伸張させるという意味がある。英語では、エンハンスメントという言葉が当てはまる。一方、寅には、いくつかの意味があるが、そのひとつに人々が手を携えて、協力するという意味がある。英語で表現すればコラボレーション。2010年の干支の意味は、エンハンスメント&コラボレーションであり、これは日本IBMがこれまでにやってきたこと。まさに日本IBMのための1年である」
IT産業の各社が、2009年までにやってきたことは、ひとことでいえば「構造改革」であった。
多くの企業は、経済環境の悪化を背景に、人員削減や事業の統廃合、コスト削減といった厳しい改革に挑んできた。これは、短期的な収益の改善という側面があるものの、その一方で、次の成長期に向けて戦うための体質改善だったともいえる。
多くの経営者に共通した意見は、景気が回復しても以前のような状況には戻らず、グローバル化、フラット化を前提とした「New Economy」時代が到来するという点である。グローバル化の影響にも耐えることができる、軽くて、速い経営体質への投資が求められてきたのが2009年だったともいえる。
その種をどう花開かせるか。そのためにどんなパートナーとのコラボレーションが求められるか。2010年は、IT産業にとっても「庚寅」に込められた意味が重要になる年といえよう。