マイクロソフトとシティが提供するパーソナルファイナンス第三の選択肢

飯田哲夫(電通国際情報サービス) 2010年02月16日 11時00分

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 Microsoft、Citi、Morningstarが、「Bundle」と呼ばれるパーソナルファイナンスサイトのベータ版をリリースした。機能はまだかなり限定的だが、自分の年齢、家族構成、年収、居住地を選択すると、その支出傾向を同じカテゴリーの人たちと比較してくれる。

 デザインはオンライン系パーソナルファイナンスらしい軽快で明るいもので、FacebookやTwitterと連携しているのは今時らしい。しかし、最大の特徴は、その比較データのソースとしてCitiを活用していることだろう。

パーソナルファイナンス戦争の第一幕

 かつてパーソナルファイナンスツールと言えば、Intuitの「Quicken」やMicrosoftの「Microsoft Money」がメジャープレーヤーであったが、これらはインストール型の有償ソフトウェアであった。これに対して2004年頃から出てきたオンラインのパーソナルファイナンスツールは、コミュニティ機能を備えるとともに、無料で提供されたのが最大の特徴であった。

 結果として、MicrosoftはMoneyから撤退、Intuitはオンライン系の有力ベンチャーであったMint.comを買収し、今後のパーソナルファイナンスの方向性はオンラインであることが明確になった。また、こうした動きに呼応するように、銀行及び銀行向けオンラインソリューションを提供するベンダーは、軒並みサービスメニューの中にパーソナルファイナンス機能を盛り込んだ(詳しくはこちらのエントリー「米国家計簿戦争--勝者はネットベンチャー」を参照下さい)。

オンラインパーソナルファイナンスの問題点

 過去5年くらいの間に起きたパーソナルファイナンス領域におけるソリューションの世代交代は、ベンチャーファンドが活用されている点、消費者の利便性へつながっている点、そしてスピードが極めて速い点において、実にアメリカ的だと言える。

 結果として、現在パーソナルファイナンス領域におけるサービス提供者は大きく独立ベンダー系と銀行系に分けられることとなる。独立ベンダー系はIntuit(mint.com)ほか、まだ数多くあるベンチャー企業である。銀行系とは、銀行が自らのオンラインバンキングの1サービスとして提供する形態を指す。

 しかし、そこにはそれぞれの欠点も見え隠れする。パーソナルファイナンスのサービスは、アカウントアグリゲーションの機能が備わっており、それを活用するには金融機関のユーザーIDやパスワードを登録する必要がある。また、サービスを利用すれば、利用者の金融データが全てそのサイトに集約されることとなる。これを金融機関に比すれば遥かに規制の弱い一般企業、あるいはベンチャー企業に任せることの不安は大きい。

 一方、銀行に全てを見せると、それはそれで何を売り込まれるか分からないという不安に駆られる。特に米国においてはリーマンショック以降、金融機関に対する信頼感が低下しており、全ての金融データを特定金融機関に見せることへの抵抗感も強いのが事実だ。これは、独立系パーソナルファイナンスツールが受けている理由の一つでもある。

パーソナルファイナンス戦争の第二幕

 そこで求められるのが、金融機関の信頼感を持ちながらも独立したサービスを提供するパーソナルファイナンスサービスなのである。今回ベータ版が提供されたbundleは、まだ機能面で所謂パーソナルファイナンスサービスへと向かうのかは分からない。ただ、Citiのコミットを得ながらも、CitibankやCiti Cardsのサービスの外側に存在していることは確かである。

 これがMicrosoftのパーソナルファイナンス分野における巻き返しとなるのか、また、Citiには完全に取り込まれずに消費者のニーズを捉えた第三の選択肢として成長するのか、今後も先行きを見守ってみたい。

筆者紹介

飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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