セールスフォース・ドットコムは3月17日、中外製薬がコールセンターシステムの刷新にあたり、同社の「Salesforce CRM」「Service Cloud」の導入を行ったと発表した。ライセンスの販売およびシステム開発は、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)が行った。
中外製薬は、Salesforce CRMとNTTコミュニケーションズのIPコールセンターASPサービス「Customer Connect」を連携し、コールセンターシステムを構築。2008年11月に、コールセンター機能を担う医薬情報センターで運用を開始した。導入前に比べ、医師、薬剤師、患者、自社MRなどからの問い合わせへのキャパシティが20%増加したという。また、MR支援システムとも連携して問い合わせ情報のフィードバックを図り、顧客対応力の強化を実現したとしている。
セールスフォース・ドットコムによれば、従来のコールセンターシステムは、現場のビジネスニーズを過度に取り入れてカスタマイズを繰り返した結果、拡張性に乏しく、基幹システムとの連携が困難な独立システムとなっていたという。そのため、バージョンアップ時には完全な再構築が必要で、約5年のサポート期限切れのたびに、膨大なコストの発生が避けられなかったとしている。
こうした背景の下、中外製薬社内のOS環境刷新が決まったが、新OSへの対応においても膨大な改修費用が必要になることから、クラウドコンピューティングサービスを活用した新コールセンターシステムの構築を検討しはじめたとする。中外製薬では、Salesforce CRMの導入に先立ち、既存システムのバージョンアップと比較した開発期間、初期費用、運用コストなどの試算を行い、Salesforce CRMの方が、短期間かつ低コストで開発が行え、運用コストも削減できると判断したという。
キヤノンMJでは、オペレーターの操作性を高めるため、ユーザインターフェース開発ツール「Visualforce」を用いて画面を開発。これにより、オペレーター業務に必要な情報を1画面で表示でき、検索ボックスに入力したキーワードに関連する問い合わせ履歴内容をポップアップ表示できる仕組みを作成した。また、40万件におよぶ既存システムのデータも移行し、約5カ月で稼働を開始した。システム開発における初期費用は約60%削減でき、TCO(総所有コスト)は5年間で約40%削減できる見込みという。
新システムでは、登録された問い合わせ内容を、顧客にひもづいた履歴データとして参照できるようにすることで、問い合わせ内容を分析し、頻繁に問い合わせのある質問項目に対する回答をFAQとして公開するなど、業務の効率化を図っているとする。さらに、新システムにより、IT部門の運用管理負担が大幅に軽減されたため、中外製薬では基幹システムを含めた複数の社内システムと連携し、訪問履歴管理、実績管理、経費精算管理、日報管理といった業務のプラットフォーム共通化プロジェクトを進めているという。