「今回は間接部門から導入しましたが、通常のオフィス業務については、シンクライアントはまったく問題ないと考えています。しかし専門的な業務、たとえば扱うデータが膨大な業務や、画面転送が多い業務などシンクライアントに適さないものもあります。そのため、なかなか全社展開が難しい面もありますが、当初からそれを見越してシステムを構築しています」
そこで同社はシンクライアント化に当たり、サーバベースドコンピューティング(SBC)と仮想PCの2つの方式を用意。業務によって最適に使い分けができる仕組みを考えた。
SBCは、Citrix SystemsのXenAppサーバ群を核としたものだ。XenAppは従来のリモートアクセス機能に加え、情報セキュリティ分野でも強力なミドルウェアとして実績がある。同時に、アプリケーションをサーバで一括管理できることで、TCO削減も可能になる。基幹システムなどの業務アプリケーションはサーバ側で稼働、一方オフィスアプリケーションやメールなどのコミュニケーションツールはクライアント側でという形になる。1台のサーバに何人ものシンクライアントを同時ログインする形になるが、PCの使い勝手も残している。
しかしそれでは不満というユーザーもいる。ひとつのOSの中に複数のユーザーが入ってくるため、「重い」データを扱うユーザーがいると、同じサーバにログインした他のユーザー側でも反応が遅くなる可能性があるからだ。多くのCPUパワーを消費するような、通常のオフィス業務ではない業務をシンクライアントでカバーするには懸念がある。
「だれか1人がそのような重い業務を行うと、ほかの何十人もの人の作業に影響が出るため、われわれはXenApp以外に同じくCitrixのXenDesktopによる仮想PC方式も用意しました。これは別途仮想の個別環境を作り、1人に対してひとつのOSの専用環境を提供するものです。たとえば、Excelの表を何枚もつきあわせてマクロを走らせる経理業務だとか、データベースの大量データを扱う人向けの環境です。これによって、専門的な業務を行う人は通常のクライアントPCとそん色ない形で業務ができるようになっています」
SBCと仮想PCの2方式によって、さまざまなユーザーがシンクライアント環境を快適に利用できるようになったのだ。
ユーザーに違和感のない端末を
NTTコムウェアでは今回のシステム導入にあたり、ミドルウェアにはCitrix、端末にはWyse Technologyのシンクライアントを選定した。