情報漏えいが社会問題として連日紙面をにぎわしたのは2003年〜2004年ごろである。NTTコムウェアも当然この問題に対応、社員のPCの安全性を守るため、セキュリティ関連のソフトウェアをいくつもインストールすることとなった。しかしそれによって安全性は確保されるものの、ユーザーからは起動に時間がかかるなどの問題も指摘された。インストール作業や管理作業などの負担も含めると、投資もかなりの額に上っていた。その問題を解決するというのが今回のシンクライアント化だった。
2007年のトライアル開始から3年。今回のシンクライアント導入では、セキュリティリスクへの対策や、ガバナンス強化、ITコスト削減、労務費削減といった目的があったが、セキュリティやガバナンスの強化とともに、コスト削減効果が大きいようだ。特に具体的な数値では計り知れない、いわゆる「隠れたコスト」の削減が大きいという。
「隠れたコストの削減というのはなかなかつかみづらいのですが、たとえば端末の起動時間の短縮やアップデートに関わる時間の短縮、さらにはPCが故障した場合の復旧するまでに要する時間や手間なども見逃せません。また、シンクライアント化による情報資産の一元管理によって一歩進んだデータサービスが実現できたというのも隠れた効果です。これはもちろんコストに跳ね返ってくるものですが、単なるコストだけでなく質的な向上も実現できたと考えています」
もちろん「目に見えるコスト」も削減された。従来のPC端末をシンクライアント化したことで、システム側のコストは増えたものの端末管理コストは大幅に削減。端末コストや端末設定コストも削減され、トータルで約15%のコスト低減が見込めるという。
NTTコムウェアでは、次のシンクライアント戦略を考えている。当面スケジュールに上がっているのは、サーバの仮想化だ。
「サーバの仮想化によって、ハードウェアの故障や実際のOSの動作などを分離できます。そのため、OSを他のサーバに移行させるなどユーザーになるべく影響がないような形で運用させることが可能になります。また、仮想化サーバではOSイメージがハードディスクにコピーされているだけですから、ユーザーが増えてもそれをコピーすれば同じ環境が容易に構築できます。構築の手間を省きながら、ユーザー増加にしたがってサーバを増やすことができるわけです」
同社は今後関連会社や協力会社などにもシンクライアント化を展開していくが、仮想化によってその導入と運用の手間をさらに省くことができる。この仮想化については3月中にトライアルをスタートし、6月末までにXenAppのサーバはすべて仮想化する計画だ。
これによってユーザーに影響を与えることなく、サービスプロバイダ部の運用の効率化が図れる。同時に、仮想化によってユーザーの使用環境はそのままでサーバを集約できるため、運用コストとともに省電力も実現する。いわゆるグリーンITの実現だ。
NTTコムウェアでは、社内でのシンクライアント化の実績を基に、外部に向けたエンタープライズクラウドサービスを2009年7月に「SmartCloud」として発表している。SmartCloudでまず最初に展開していくのが、いわゆるデスクトップをサービスとして提供する「DaaS」(Desktop as a Service)だ。今後社内でのシンクライアント化をより強化する一方で、SmartCloudを基盤とした外部に向けたサービスにも注力していく考えだ。