レガシー追撃を狙うデルの「E3戦略」とは?--クラウド向けサーバ新製品群を一挙投入

大川淳

2010-04-02 12:14

 デルは4月1日、データセンター、クラウドコンピューティング向けの高密度サーバ「Dell PowerEdge C」シリーズをはじめとするサーバ製品群、ストレージ製品を発売するとともに、クラウドの構築、拡充を支援する新たなサービス、ソリューションを発表した。大型汎用機、Unixのシェアが依然高い、国内の上位サーバ市場への攻勢を強化することを目指す。

 今回、投入される製品は、クラウドプロバイダー向けサーバ「PowerEdge C1100/C2100/C6100」、プライベートクラウド向けサーバ「PowerEdge M910/R910/R810/R815/R310」、ディスクバックアップソリューション「Dell|EMC DD140/DD610/DD630」、ミッドレンジNASの「Dell|EMC NS-120/NS-480/NS-960」などとなっている。

 「Dell PowerEdge C」シリーズは3機種を用意しており、CPUに、6コアインテル Xeon 5600シリーズ、およびクアッドコアインテル Xeon 5500、5600シリーズを採用している。従来、DTO(Designed-To-Order:フルカスタマイズ生産)で、検索サイトなど、超大規模な用途向けに提供されてきた製品を汎用化したものだという。

 最上位機種のPowerEdge C6100は、2Uシャーシに、4台の独立したサーバを収納できる超高密度ラックサーバ。大規模ウェブサイトやパブリッククラウドサービスを提供する企業などからの需要を見込んでいる。価格は139万8600円から。

 PowerEdge C2100は、データ分析やクラウドコンピューティングのプラットフォーム、クラウドストレージ用途を想定した2Uサイズのラックマウント型サーバ。価格は53万250円から。PowerEdge C1100は、大容量メモリと高効率電源を搭載。HPCなど、クラスタが最適化されたコンピュート・ノード・サーバとしての用途を見込んでいる。1Uサイズのラックマウントサーバで、価格は53万1300円から。

 PowerEdge M910/R910/R810/R815/R310は、基幹業務、データベース向けで、インテルおよびAMDの最新プロセッサを搭載した。サーバ仮想化と統合を活用する企業や、中規模から大規模のデータベースプラットフォームを必要とする企業向け。価格は65万1210円(M910)からとなっている。

 M910/R810における最大の特徴は、デルが特許申請している「FlexMemory Bridge」と呼ばれる技術が搭載されている点だ。4ソケットで、CPUが2つだけ搭載されている場合、他の2つのスロットに、「FlexMemory Bridge」を配置することで、すべてのメモリスロットにアクセスできるという。同社は「最大32DIMMまでのフルアクセスが可能で、コストを上昇させず、さらに大きなメモリ容量を利用できる」としている。

FlexMemory Bridge Dell FlexMemory Bridgeにより、2ソケット構成で4ソケットすべてのメモリスロットにアクセスできるという

 ストレージ製品のDell|EMC DD140/DD610/DD630は、米EMCが買収したData Domainのストレージアプライアンスをベースにしており、統合された重複排除機能を備えている。価格は、Dell|EMC DD140の場合、438万390円からとなっている。

Jim Merritt氏 デル、代表取締役社長のJim Merritt氏

 同日発表された、データセンター向けの新たな支援サービスには、プライベートクラウド向けに効果的なプロビジョニング環境やリソースの消費環境、管理環境の最適化などを行う「仮想化運用アセスメント」や、既存の仮想化環境の評価を行いリソース配分の最適化とセキュリティなどを推奨する「仮想化ヘルスチェックサービス」などが含まれる。クラウドプロバイダー向けには、サーバルームなどのファシリティ(設備)を最適化する「データセンターキャパシティアセスメント」を設け、冷却効率を高めたり、フロア構成の分析などを行うという。

 デル日本法人、代表取締役社長のJim Merritt氏は、「現在、コンピュータの歴史は転換期にあり、仮想化技術やクラウドに代表されるバーチャルの時代を迎えている」と指摘。「デルは、新たな時代のリーダーとなる」と宣言した。そのためには「『Open(標準技術)』『Capable(十分な能力)』『Affordable(購入しやすい)』な顧客主導のソリューションを、妥協を伴わずに提供できる企業」になることが必要だとする。

顧客の声を集約した「E3戦略」で、IT投資を有効化

 同社は、新時代のリーダーとなっていくための基本戦略として「Efficient Enterprise Ecosystem(E3)」を掲げる。メリット氏は「E3は、柔軟でダイナミックなソリューションを提供するIT環境を実現する基盤」と話す。E3を構成するのは「インテリジェントインフラ」「シンプルなインフラ管理」「円滑なワークロード管理」「インテリジェント・データ管理」の4つの基本フレームワークだ。これらは、システムのシンプル性、柔軟性、使いやすさなど、顧客企業が求める要素を集約し、課題への対処策として提示されるものだ。

 Merrit氏は、同戦略に対するデルのコミットメントを示し、「E3の実現により、企業のIT投資は業界全体で2000億ドル節減でき、IT投資の1%を収益として返還する。IT投資に占める、システムの維持管理費の比率を50%未満にまで低減化する」とした。

町田栄作氏 デル、システムズ・ソリューションズ統括本部長の町田栄作氏

 同社執行役員、システムズ・ソリューションズ統括本部長の町田栄作氏は、「日本企業のIT投資額は20年間で、ほぼ2倍に拡大したが、IT競争力では21位に留まっている。投資対効果にはまだ大きな課題がある。その要因は、国内のIT投資金額の約5割が依然、汎用機などのレガシーシステムに費やされていることだ。これは欧米や、他のアジア太平洋地域とはまったく異なる」と語る。

 デルでは、E3を具現化した今回の新製品群により、企業のIT投資をより効果の高いものにするとともに、レガシーシステムが支配的であるハイエンド領域へのさらなる浸透を図る。

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