マイクロソフトが、4月20日からシステムビルダーと連動したネットブックユーザー対象のWindows 7移行プログラムを開始した。
東芝、NEC、エイサー、ASUSTeK Computerの該当するネットブック製品を、アプライド、クレバリー、サードウェーブ(ドスパラ)、ユニットコム(パソコン工房、Faith、TWOTOP)の4社の各店舗に持ち込めば、メモリやハードディスクの増設などとともに、DSP版のWindows 7を販売する。さらに、Windows 7のインストールなどのサービスメニューを用意し、PCに詳しくないユーザーでも手軽にアップグレートができるようにしている。
このプログラムには、いくつかの注目すべきポイントがある。
一つ目は、ネットブックユーザーの多くが、パフォーマンスに関して不満を持っており、それをWindows 7という最新OSによって解決しようという提案だという点だ。
「ネットブックユーザーにとって、最大の不満点はパフォーマンスの悪さ。Windows 7へ移行するとともに、メモリの増設などを図るだけで、起動時間、シャットダウン時間を大幅に改善し、パフォーマンスも向上させることができる。さらに、Windows XPに比べて約30%の省電力化が図れることから、モバイル環境での駆動時間も伸びる」(マイクロソフト、コマーシャルWindows本部プロダクトマネジメント部シニアエグゼクティブプロダクトマネージャの細井智氏)
もちろん、マイクロソフトにとっては、早期にWindows XPユーザーをWindows 7へと移行させたいという思惑がある。
二つ目には、「DSP版の仕組み」をうまく活用したという点だ。
DSP版とは、「デリバリー・サービス・パートナー版」の略称で、特定のハードウェアと一緒に販売される製品のことだ。自作PC向けのOSでもあり、メモリやハードディスクなどのパーツとの同時販売が原則となっている。
マイクロソフトでも、「一般的には中級者、上級者向けの製品」と定義しているが、今回のネットブック向けのサービスでは、自らOSのインストールができないような初級者も対象となる。Windows XPからWindows 7への移行では「クリーンインストール」が前提となるため、技術的な敷居の高さから移行に二の足を踏んでいたユーザーも取り込みたい考えだ。
また、Windows 7をDSP版とすることで、パッケージ版に比べて低価格での導入が可能であること、さらには、1Gバイトのメモリ環境が多かった初期のネットブックのメモリを増設することで、パフォーマンスを高めることもできるため、これと組み合わせた提案が行える点も重要だ。機種によってはSSDを搭載するといったことも可能になる。
価格は各店舗ごとに設定されるため一概にはいえないが、DSP版のWindows 7と1Gバイトメモリ、インストール作業を含めて約2万5000円前後と見られる。アップグレード版のWindows 7 Professionalが2万7000円前後であることと比較すると、非常に「お買い得」ということになる。
そして三つ目は、これまで自作PCユーザーが中心となっていたシステムビルダーの店舗に、メーカー製ネットブックを所有するユーザーを呼び込むことができるという効果だ。
ネットブックはイーモバイルとの連動提案により、初級者の入門用マシンとしての購入も相次いでおり、これらのユーザーを対象にしたアップグレードも想定できる。これまでとは異なるユーザー層が、システムビルダーの店舗を訪れるきっかけにもなる。
また、視点を変えてみると、イーモバイルにとってもWindows 7へのアップグレードにより利用が喚起されれば、データ端末を解約せずに継続的に利用してもらえるといった動きが出てくるとの期待もあるだろう。
現在、ネットブックは約135万台が国内で利用されているといわれ、そのうちWindows XP搭載製品は約120万台となる。マイクロソフトでは、2010年6月までに1万台のアップグレードを期待しているという。
一点、気をつけなくてはいけないのは、DSP版をインストールすると、サポートはこれらのシステムビルダーのサポートへと移行し、元のハードウェアメーカーのサポートは受けられなくなるという点だ。このあたりを初級ユーザーにどう納得してもらうかが課題かもしれない。
ただ、ネットブックをWindows 7へと移行させる上で、DSP版の提案という目の付けどころは秀逸だ。ネットブックユーザーにとっては、より手軽にWindows 7へ移行するパスが用意されたといえるだろう。