5.企業の電話網との統合
エンタープライズにおいてBlackBerryが持つもう1つの強みとして、企業の電話網への統合を可能にするMobile Voice System(MVS)を挙げることができる。これにより、席を外している従業員の内線番号に着信があった際に、その従業員のBlackBerryに通話を転送することが可能になる。また、従業員がBlackBerryを使って電話をかけた際に、会社の内線電話から発信しているように見せかけることも可能になる。
RIMはWES 2010の場で、新たにVoice over Wi-Fiに対応するようになったMVS 5を発表した(関連英文記事)。ここでRIMがよく引き合いに出すストーリーによれば、飛行機に搭乗している時であっても、その機内でWi-Fiサービスが利用可能なのであれば(基本的には、すべての飛行機で近々Wi-Fiが利用可能になるはずだ)、BlackBerryのWi-Fi接続機能を使用することで、会社の内線番号を使用している際とまったく同じかたちで電話の発信/着信が可能になるということである。RIMのある幹部は、実際に機上から15分間の通話を行ったが、音飛びはなく、音質も良好だったと語っている。筆者はこの発言を額面通りに受け取っていないものの、エンタープライズで働く人々にとって歓迎すべき機能であることは確かである。
とは言うものの、厳しい状況が続く
BlackBerryはエンタープライズ市場において優位に立っているとはいえ、それに対抗する強力なトレンドも無いわけではない。Android端末やiPhoneは新たなユーザーを急速なペースで獲得しており、世界中の無線通信事業者からもてはやされている。こういった機器を購入しているのはほとんどがコンシューマーであるとはいえ、上述したように、これらの機器は仕事に使えるだけの十分な性能を備えているため、多くのコンシューマーがビジネスシーンで活用するようになってきている。
企業やIT部門の多くは、ユーザーが個人的に所有しているスマートフォンを職場に持ち込み、Microsoft Exchangeやウェブアプリケーションとの接続を許可することで、こういった「ITのコンシューマライゼーション」を支援している。このため、エンタープライズ市場におけるBlackBerryのシェアは侵食されつつある。
もちろん、iPhoneやAndroid端末の多くでは、企業のビジネスプロセスやアプリケーションとの緊密な統合が実現されておらず、その点こそがBlackBerryの最大の強みとなっている。しかし、ビジネスアプリケーションがウェブに移行し、ブラウザからのアクセスが可能になった時、BlackBerryはどうなるのだろうか?