NECは5月21日、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)に納入したベクトル型スーパーコンピュータ「SX-9/4B」が稼動を開始したと発表した。SX-9/4Bは4CPUを搭載、最大理論性能は409.6ギガFLOPSであり、多種多様な分子化学反応を解析、設計するための量子化学計算ソフト「Gaussian」最新版にも対応しているという。
JAISTは、SX-9/4Bの処理性能や特長を活かして、(1)生体系で炭酸水素イオンが二酸化炭素と水に変換される反応を触媒する炭酸脱水酵素の量子化学的解析、(2)血流や呼吸による気流など生命を維持するための生体内のさまざまな流れと疾病の病態の関係、(3)超微細金属クラスターとカーボンナノチューブによる新規触媒材料の設計と物性研究開発、(4)光受容たんぱく質など光が展開する生物有機化学を対象としたシミュレーションによる分子材料の設計開発――などの研究、開発に利用する予定だとしている。
JAISTでは、これまで以上に精度の高い研究結果が得られることを期待しており、情報科学センター教授の松澤照男氏は「これまで導入していたSX-8に比べ約3.2倍の理論性能をもつSX-9は、実効性能も高く使い易いシステムであることから、本学の科学技術計算がさらに進展するとして期待している。また、ベクトル計算に適した科学技術計算のスキームやアルゴリズムの開発も加速されると思う」と述べている。JAISTの情報科学センターは、2006年にNECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-8」を導入し、ほかのスカラー型システムなどと連携することでさまざまな分野で研究成果を挙げてきたという。