IDC Japanは8月25日、2010年に実施した調査および取材をもとにした国内デスクトップ仮想化市場の産業分野別および従業員規模別のROI(投資対効果)の算出と分析の結果を発表した。
調査結果によると、デスクトップ仮想化のROIは3年間で327.2%、回収期間は12.2カ月となった。さらに、デスクトップ仮想化製品の導入によって、エンドユーザー、IT管理者、企業全体の生産性はそれぞれ、26.2%、29.7%、32.1%向上しているという。この結果から、デスクトップ仮想化が生産性を高める戦略的製品であることがより明確になったとIDCでは分析している。
今回の調査では、デスクトップ仮想化導入実績のある企業のIT管理者471人を対象にウェブ調査を実施したという。産業分野別のROIは「情報サービス」が407.3%と最も高く、次いで「自治体および教育」400.5%、「金融」319.9%、「製造」292.2%の順となっている。IDCは、クライアント仮想化の導入が進んでいる業種で投資対効果が高いと説明している。
また、1人あたりのベネフィット(効果)に換算した場合は、「自治体および教育」が108万4319円と最も高くなった。IDCはその理由として、自治体や教育分野においては、ITリテラシーが低いためにIT全般の導入が民間企業ほど進んでいない点を挙げている。また、1人あたりの初期投資額は「情報サービス」が24万2100円と最も低い結果となった。IDCは、情報サービス分野では自社技術を活かしてデスクトップ仮想化を構築し、システム構築費用が他の業種より低く抑えられることが要因だと分析している。
一方、従業員規模別のROIは「1,000〜9,999人」の企業が347.4%と最も高く、次いで「10,000人以上」で342.1%、「1〜99人」で327.8%という結果になった。「100〜999人」の企業は281.2%と、他のセグメントに比べて低い結果となっている。IDCは、小規模企業では投資対効果の投資部分の最小化、大規模企業では投資対効果の効果部分の最大化がそれぞれ可能である一方、「100〜999人」の中規模企業は、その他のセグメントと比較すると投資効果は低くなる傾向にあると解説。また、初期投資額、年次投資額、ベネフィットは、従業員規模に比例して高くなるとその傾向を分析している。
IDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの渋谷寛氏は、「戦略的IT投資と固定的(保守)IT投資のバランスを最適化する時代を迎えている中で、デスクトップ仮想化は戦略的IT投資と位置付けられる。デスクトップ仮想化を選択することでユーザー企業は便益を得られることが、今回の調査で判明した。また、産業分野別、従業員規模別のROI分析を行うことによって、業種の構造とセグメント別の傾向が明確になった。これらの結果から、初期導入コストという最大の障壁は、エンドユーザーにROIを示すことによって払拭することが可能になる」とコメントしている。