国内固定系通信サービス、モバイル回線の需要増により市場縮小--IDC予測

富永恭子(ロビンソン)

2011-01-20 21:34

 IDC Japanは1月20日、国内通信サービス市場の予測を発表した。これによると、音声、IP電話、ブロードバンド、IPTV、法人WANサービスなどを含む国内固定系通信サービスの、2010年のエンドユーザー売上額は4兆6946億円で、前年比成長率はマイナス1.7%だったという。

 このうち、法人WANサービス市場については、エンドユーザー売上額が2007年の7359億円をピークに毎年徐々に減少し、2010年の市場規模は7193億円、前年比成長率マイナス1.5%となった。IDCでは、市場の縮小は、市場の飽和に加え、不況の影響などでユーザー企業が単価の高い回線から安い回線に切り替えていることや、競争の激化により回線の低価格化が進んでいることなどが要因と分析している。

 一方、データセンターへのサーバ集約や、クラウドなどネットワークを介したIT利用の新しいトレンドが広がっており、こうしたトレンドが利用回線の広帯域化など市場拡大要因になるとの見方もあるとしている。しかし、市場の飽和などの縮小トレンドの影響がより強く、2009〜2014年の年間平均成長率はマイナス2.0%で推移し、2014年のエンドユーザー売上額は6595億円になるとIDCでは予測している。

 音声とFTTH、ADSL、CATVブロードバンドなど固定系ブロードバンドの合計回線数は、2010年に7330万回線、前年比成長率マイナス3.5%となり、2009年の7599万回線から約270万回線の減少となっている。音声と固定系ブロードバンドの合計回線数の減少は、固定系回線を持たずにモバイル回線だけを利用する世帯が増えていることが要因のひとつとIDCではみており、この減少傾向は、LTEなど高速のモバイル回線が普及することから今後も続くと見込んでいる。

 IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は「法人WAN回線を提供する通信事業者は、通信回線単独での収益拡大が難しくなる。したがって、通信回線をクラウドなど上位レイヤの新しい分野の法人向けサービスとセットで提供し、通信設備を保有する事業者ならではの強みを活かす戦略をとる必要がある。また、個人市場では、高速のモバイルブロードバンドに抵抗するため、コストパフォーマンスを訴求できるような料金体系の見直しや固定系ブロードバンドを利用するアプリケーションの充実をはかる必要がある」とコメントしている。

2006〜2014年における国内法人WANサービス市場エンドユーザー売上額実績と予測 2006〜2014年における国内法人WANサービス市場エンドユーザー売上額実績と予測(出典:IDC Japan)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  5. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]