IDC Japanは2月7日、国内中堅中小企業IT市場の2010年〜2014年の予測アップデートを発表した。これによると、2010年の国内中堅中小企業IT市場規模は、3兆6361億円で前年比マイナス0.1%となったが、2011年は3兆6380億円で前年比0.1%増と4年ぶりのプラス成長になると予測している。
2010年の国内経済は、徐々に明るい兆しが見えたものの、依然として不透明な状況が継続した。このため、経営体力に乏しい中堅中小企業では、サーバ、PCなどのハードウェアにおいて更新需要は再開したが、新規システムなどのIT支出の抑制は継続したため、同年の国内中堅中小企業IT市場は3年連続でマイナス成長になったとIDCは説明している。また2011年は、中堅中小企業の中でも従業員規模の大きい企業を中心に、基幹系システム更新や新規システムなどのIT支出が復調するが、依然として経済環境は不安定なことから、市場全体では微増にとどまるととIDCではみている。
IDCは、産業分野別で2011年にプラス成長するのは、「流通」(前年比成長率0.3%)、「情報サービス」(同0.5%)、「サービス」(同0.7%)だと予測している。積極的なIT投資が見込まれる分野としては、流通では業務効率化、顧客管理および分析、Eコマース関連、情報サービスではウェブサービス関連としている。またサービス産業に含まれる医療のレセプトオンライン化や地域医療連携を目的にしたIT支出が継続するほか、コールセンターなどのビジネスサービス事業者においても比較的堅調なIT支出になるとIDCでは予測している。
その一方で、マイナス成長となる産業についてIDCでは「金融」(同マイナス2.5%)、「製造」(同マイナス0.4%)、建設および土木などを含む「その他」(同マイナス0.4%)を挙げている。これらの業種では、2011年もマイナス成長が継続し、プラス成長への回復は2012年以降になるとIDCは見ている。
IDCは、2011年以降、国内中堅中小企業IT市場はプラス成長が継続するが、1%に満たない低い成長率にとどまると予測。その背景には、ハードウェアの低価格化に加え、クラウドコンピューティングあるいはビジネスアウトソーシングの利用拡大により、従来分のIT支出規模が減少することが要因にあると分析している。
IDC Japan ITスペンディング マーケットアナリストの市村仁氏は、「今後の国内中堅中小企業IT市場を拡大させるために、ITベンダーは『海外展開』や『Eコマースおよびウェブサービス』といった中堅中小企業の注力分野に対して、ノウハウなどのITソリューションを超えた幅広い支援を行うことで、新たなIT需要を喚起することが求められる」とコメントしている。