クラウドは本当に“売れる”のか--SaaSへの期待と現実のギャップ - (page 2)

岩上 由高 (ノークリサーチ)

2011-04-01 09:00

SaaS活用における期待と現実のギャップ

 では、中堅中小のユーザー企業はこれら2つのシステムのクラウド活用に何を期待しているのだろうか。

 次のグラフは年商500億円未満の中堅中小企業に対し「SaaSのメリットと考えられる事柄」を尋ねた結果である。

SaaSのメリットと考えられる事柄(出典:ノークリサーチ) SaaSのメリットと考えられる事柄(出典:ノークリサーチ)※クリックで拡大画像を表示

 「ハードウェアやソフトウェアの購入や管理/運用が不要」といったコスト削減に関連するメリットが多いことがわかる。つまり、中堅中小のユーザー企業はSaaSを「身近にあるシステムに適用することでコスト削減を実現できるもの」と捉えているのだ。

 ところが実際はそう簡単にはいかない。実はユーザー企業もそのことを十分理解している。以下のグラフは年商500億円未満の中堅中小企業に対して「SaaSのデメリットと考えられる事柄」を尋ねた結果である。

SaaSのデメリットと考えられる事柄(出典:ノークリサーチ) SaaSのデメリットと考えられる事柄(出典:ノークリサーチ)※クリックで拡大画像を表示

 「自社が求める情報処理システムを実現しようとすると、逆に費用が高くなってしまう(個別カスタマイズが困難)」「社内に置かれた他の情報処理システムとの連携が難しい」といったように、SaaSが抱える技術課題を比較的正しく把握している状況がうかがえる。ここで、SaaSに期待するメリットと現実のデメリットの間に大きなギャップが生じることになる。

 基幹系業務システムは中堅中小企業においてもカスタマイズやシステム連携が加わることが少なくない。その状態のシステムをSaaS上に再現するには一部の機能を諦めたり、費用のかかる個別対応が必要となってくる。その結果、期待されたコスト削減効果を得ることが難しくなってしまう。会計など、単体での基幹系業務システムのSaaS活用が難しい理由もこうした要因によるところが大きい。

 一方、情報共有システムは、基幹系業務システムと比べるとカスタマイズやシステム連携に起因する障壁は少ない。しかし、SaaSへ移行しやすい(システムがシンプル)ということは、自社内運用でも負担はそれほど大きくないことを意味する。そのため、コスト削減効果が高くならず「慣れに起因する変化への抵抗(使い慣れた操作画面を手放したがらない)」が足かせとなることも少なくない。

 もちろん、基幹系業務システムや情報共有システムのSaaS活用が有効なケースも存在する。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Pマーク改訂で何が変わり、何をすればいいのか?まずは改訂の概要と企業に求められる対応を理解しよう

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  4. セキュリティ

    2025年はクラウドを標的にする攻撃が増加!?調査レポートに見る、今後警戒すべき攻撃トレンド

  5. セキュリティ

    最も警戒すべきセキュリティ脅威「ランサムウェア」対策として知っておくべきこと

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]