クラウドは本当に“売れる”のか--SaaSへの期待と現実のギャップ - (page 3)

岩上 由高 (ノークリサーチ)

2011-04-01 09:00

 基幹系業務システムや情報共有システムのSaaS活用が有効なのは、次のようなケースであろう。

  • 単体PCで会計システムを運用している小規模企業のセキュリティ強化
  • グループ企業も含めた大企業における連結会計業務の効率化
  • 起業したばかりの小規模企業におけるメールやグループウェアの利用
  • 独自の作り込みを重ねた大規模な情報共有システムの保守/維持コスト軽減(例:独自データベースが多数存在する比較的古いバージョンのLotus Notes/Domino環境の維持など)

 だが、いずれも小規模企業ないしは大企業が中心となる用途であり、中堅中小企業全般に当てはまるケースとはいえない。

 技術的には、PaaSやIaaSを組み合わせればカスタマイズやシステム間連携に関する課題を解決することは可能だ。SaaSの範囲内においても、BoomiやCast Iron SystemsなどのSaaS間連携ソリューションが登場してきている。さらに、BIや原価計算といった細かい粒度の機能でSaaSを利用するという取り組みも進んでいる。

 だが、これらはいずれも「目の前にあるシステムのコストを削減する」というより、システムの柔軟性や俊敏性の改善に寄与するものだ。本来クラウドの活用はそうあるべきなのだが、中堅中小企業の多くが求めるクラウド活用がその段階に達するまでにはもう少し時間がかかるというのが実情だ。

 では、「目の前にあるシステムのコストを削減する」というユーザー企業のニーズに合致し、販社とSIerにとっても有効な商材となるSaaS活用は存在しないのだろうか?

 次回は、基幹系業務システムや情報共有システムだけではないSaaS活用の可能性について考えていく。

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