SIerはSaaSを担ぐべきなのか

岩上 由高 (ノークリサーチ) 2011年04月08日 10時45分

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 前編の「クラウドは本当に“売れる”のか」では、中堅中小企業がSaaSを「目の前にあるシステムのコストを削減する手段」として期待を抱く一方で、いくつかの障壁によって実際の取り組みがなかなか進まないという現状について述べた。

 だが、中堅中小企業がコスト削減を実現でき、販社やSIerにとっても商材となるSaaSの適用対象もあるはずだ。今回はその可能性について探っていくことにする。

忘れてしまいやすい運用管理系システムの存在

 冒頭に述べた「目の前にあるシステム」とは、基幹系業務システムと情報共有システムのことだ。これら2つは、ユーザー企業が日頃から最も触れる機会の多いシステムであるため、SaaS活用の対象として真っ先に想起される。だが、そもそもその発想自体が本当に正しいといえるだろうか。もっとSaaSに適した別のシステムがあるのではないだろうか。

 そういう視点に立って、基幹系業務システムや情報共有システムのSaaS活用の課題をもう一度振り返ってみよう。

 基幹系業務システムでは「カスタマイズやシステム連携」が課題となった。情報共有システムでは「自社内運用の負担がそもそも高くない」「画面操作などの使い勝手が変わってしまうことへの抵抗」といったことが足かせとなっていた。逆に言えば、

  • 条件1:自社内での運用負担が大きい
  • 条件2:カスタマイズやシステム連携が不要ないしは殆どない
  • 条件3:SaaS適用に際して画面操作などの使い勝手が変わらない

 を満たすものがあれば、ユーザー企業が考える「目の前にあるシステムのコストを削減する手段」としてのSaaSを実現できることになる。

 これを踏まえて、前編の冒頭に掲載した「SaaSを利用する可能性が最も高い情報処理システム」の項目を眺めてみていただきたい。すると、上記三つの条件にまさに該当するものがあることがわかる。

 それは

  • クライアントPCセキュリティ管理(ウイルス定義ファイル適用や情報漏えい防止対策など)
  • クライアントPCデータ管理(データのバックアップなど)
  • クライアントPC運用管理(資産管理や不正アプリチェックなど)

 といったクライアントPC管理に関連する項目だ。

 運用管理系システムはSaaSの対象として意識に上りにくいかも知れない。だが、基幹系業務システムや情報共有システムと並んで、ユーザー企業の情報処理システムを構成する重要な要素の1つだ。

 中でもクライアントPC管理はユーザー企業内での運用負担が大きい。なぜなら、サーバやストレージの台数が少ない企業であっても、クライアントPCは社員数とほぼ同数存在しており、他のIT機器と比べてそれだけ管理すべき対象が多いからである。また、クライアントPC管理に際してカスタマイズやシステム連携の必要性は低いといえる。さらに、昨今ではマルウェア対策や資産管理といった分野において、クライアントPC側に導入するモジュールの使い勝手は従来と同様だが、管理機能をSaaSとして提供するものが登場してきている。この場合、個々の社員の使い勝手は変わらず、管理サーバを設置する必要がないといったSaaSのメリットを享受することができるわけだ。

 このように運用管理系システム、その中でもクライアントPC管理はSaaSの適用対象として非常に期待できる分野といえる。

SaaSにおいても「売り手」の存在は欠かせない

 ここまで述べたようにクライアントPC管理におけるSaaS活用は、現時点ではユーザー企業の認知がまだ低いものの、今後の伸びが期待できる商材といえる。しかし、ここまで読まれた販社やSIerの方々の中には「大手のサービス提供者が直接ユーザー企業にアプローチしてしまえば、自分達の入る余地はないのではないか?」とお考えの方も少なくないだろう。

 そこで見ていただきたいのが次のグラフだ。これは年商500億円未満の中堅中小企業に対し、「SaaSを活用する際の望ましい契約形態」を尋ねた結果である。

SaaSを活用する際の望ましい契約形態(出典:ノークリサーチ) SaaSを活用する際の望ましい契約形態(出典:ノークリサーチ)※クリックで拡大画像を表示

 「販売会社」「既存の販社/SIer」「既存のリース/レンタル業者」といったように、何らかの仲介役を通じてSaaSを利用したいという回答が、SaaS提供者と個別に直接契約を結ぶという回答を大きく上回っていることが分かる。

 ユーザー企業が思い浮かべる仲介役の多くは、既存で何らかの取引のある業者である可能性が高い。つまり、ユーザー企業側はSaaS活用においても販社とSIerのサポートを必要としているのだ。単なる一過性のドアノックツールに終わらず、継続的にユーザー企業との関係を維持できるという点で、SaaSの活用は販社とSIerのビジネス安定化にも寄与できる可能性がある。

 販社やSIerとしてはビジネスの可能性を期待できる半面、「トラブルが起きた時の責任を負わなければならない」「サービスの品質が悪ければ、ユーザー企業に責められるのは自社になる」といった懸念も当然あるだろう。そのためにはSaaS提供者の正しい見極めや、ユーザー企業の更なるニーズ把握が欠かせない。

 本稿で紹介しきれなかったそれらの詳細については、4月20日開催のセミナー「セミナーで知る、クラウドビジネス成功の秘訣」でお話しさせていただく予定だ。本稿や下記のセミナーが販社およびSIerにとっての「継続的効果のあるドアノックツール活用」の一助となれば幸いである。

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