ただ、藤田氏は「Oracle DBとPostgres Plusは補完関係にあり、完全にぶつかるものではない」とも説明する。EnterpriseDBでは、Oracle DBからどのアプリケーションをどれくらい移行できるのかを判定するサービス「Oracle Migration Assesment」も提供している。このサービスを利用すると、Oracle DBから「どれくらいやさしく移行できるのか、どれくらい気をつけなきゃいけないのかが分かる」(藤田氏)ことで、Postgres Plusが「ユーザー企業にメリットがどれくらいあるのかを理解してもらう」(藤田氏)ことができるという。
OSSへの見方が変わってきている
Postgres Plusは、PostgreSQLを中核に、企業内で使われることを前提に可用性や性能、セキュリティを向上させているとともに、標準技術を活用した容易な保守性や移植性も備えている。いわばPostgres Plusは「OSSと商用ソフトのいいとこ取り」(藤田氏)をしたものだ。
OSSであるPostgreSQLが、Postgres Plusの中核だ。藤田氏によれば、OSSは「コアメンバーがどれだけ優秀かが重要になってくる」という。PostgreSQLのコアメンバーのうち2人がEnterpriseDBに在籍していて、EnterpriseDBがPostgreSQLに貢献していることになる。また、PostgreSQLの開発コミュニティ自体も「独立して活発なコミュニティ」(藤田氏)という。PostgreSQLは「20年もの企業向けの開発実績がある」(藤田氏)と説明する。
OSSと企業システムの関係を考えると、この2~3年で大きく変わってきていると感じる読者も多いのではないだろうか。ウェブ系であればLAMPやLAPPなどのスタックは4~5年前から当たり前に活用されていたが、基幹系システムとなると、OSSはなかなか採用されにくかったというのが実情だろう。しかし、そうした風潮も「2007年前後にJavaがOSS化されたのを契機に変わってきたように思う」(藤田氏)。藤田氏は2005年からレッドハットに務めていた経験をもとにそう分析している。
「以前であれば、OSSと商用ソフトは分けて考えていたが、今はそうなっていない。2010年1月にはOSとしてLinuxを基盤にした東証のarrowheadが稼働していることでも、OSSに対する見方は大きく変わってきた」(藤田氏)
日本語対応の重要性
「LinuxがOSとして稼働するようになり、アプリケーションサーバでJBossやTomcatが使われるようになってきている。つまりレイヤが上がってきている。次はDBでもOSSを使おうという動きになっている」と藤田氏は語る。そうした流れの中で、今回日本法人としてエンタープライズDBが設立されたととらえることができる。
EnterpriseDBは2004年に設立され、これまでにベンチャーキャピタルやIBMやRed Hatのほかに、日本のNTT(持ち株)やサイオスも出資している。NTTは2008年時点でEnterpriseDBに出資しており、その時に「なぜ日本法人を立てないのか」と持ちかけたそうである。だが、2008年段階では「EnterpriseDBは、日本法人を立てるとなると大きな投資になることから、慎重になっていた」(藤田氏)という。
しかし、OSSに対する見方が変わってきたことを受け、「今であれば、日本市場はビジネスになりうる」(藤田氏)ことから、この2011年に日本法人を設立している。また、この決定の背景には「ユーザー企業やパートナー企業に対して日本語で答えないといけない」(藤田氏)という状況もあった。つまり、日本市場でビジネスを展開する以上、日本語で対応するのが当然であり、今回の日本法人設立には、そうした対応ができるようになったという判断である。
エンタープライズDBの国内パートナーは、EnterpriseDBに出資しているサイオスとコムテックの2社。「パートナー企業がそろったこともあって、日本法人を設立できている」(藤田氏)という。パートナー企業について藤田氏は「増やしていくことを検討しているが、今後はサーバのハードウェアベンダーやSIerに注力していきたい」と説明している。