復興のための無償提供は地元ビジネスの芽を潰すのか--3.11後のITビジネス

小山安博

2011-06-02 13:08

 5月9日に都内で開催された「緊急営業会議:3.11後のITビジネスと営業の役割」では、東日本大震災後にIT企業の営業はどのような役割を果たすべきかが議論された。

 本特集「3.11後のITビジネスと営業の役割」では、第1回でZDNet Japanが実施したアンケート調査の結果を紹介、第2回の「震災を機にワークスタイルが変わらざるを得ない」から議論の模様をレポートし始めた。

 前回は終盤で、震災後はワークスタイルが変わらざるを得ないという指摘があり、在宅勤務の諸問題などが議論された。アイティメディアの藤村厚夫氏は、大震災以前にITサービスの商材で「積極的に売っていなかったものもあるのではないか」と指摘。グループウェアやテレワーク関連などで、新たなビジネス領域が広がるのではないかと期待を寄せた。例えば、Skypeを使ったオンライン会議のように、会議のためだけに実際に集まる必要がなくなる製品は、もっと活用されるべきだという。

今このとき、ITに投資する価値はあるのか

 来場者からの声では、今最も問い合わせがあるのがデータ破損への対応で、特に被災地以外からの引き合いが多いという。具体的には、データの移設、バックアップ、ハウジングでニーズが高まっているそうだ。UPS(無停電電源装置)に関しては、計画停電の3時間をまかなうものではなく、安全にシャットダウンできるまでの時間を稼げるレベルのものに引き合いが集まっているという。また、震災直後はオンプレミスの補完としてクラウドに対する引き合いが強かったが、システムを二重化したいという要望も多いそうだ。

 クラウドという点では、クラウド型グループウェアへの引き合いは増えたものの、大きな動きとまでは言えず、既存のオンプレミスのリプレイス時期が来たら、クラウドと比較するようになったという印象と述べる来場者もいた。

 さらに、SMBの中でも特に従業員30人以下の企業の場合、クラウドかオンプレミスかという以前に、ITに投資する価値があるかどうかが問題だという来場者からの声も聞かれた。BCP(事業継続計画)やDR(ITによる災害復旧)、グループウェアといったものに興味がない企業のマインドチェンジが起こるかどうかまでは、「楽観的には考えていない」という。

 「クラウドはまだ企業の基幹で使われる例は少ない。クラウドを基幹業務に使うと安全という触れ込みで、徐々に基幹業務に移行していくのではないか」という来場者の声もあった。

製品の無償提供は現地ビジネスの目を潰さないのか

 被災地のビジネス復興において、ITビジネスが果たす役割は何か。そんなテーマでも議論が進んだ。

 東日本大震災の直後から、多くのITベンダーが被災地向けに無償で製品やサービスを提供してきた。しかし、この「無償提供」が地元企業のビジネスの芽を潰してしまう懸念があるとし、提供を取りやめて個別案件に切り替えた企業もある。

 司会を務めたZDNet Japan編集長の冨田秀継は、現地企業も含めたIT企業の営業は、被災地で、何を、どうやってビジネス化するのかと問いかけた。

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