米Hewlett-Packard(HP)が、PC事業分離を検討していることを発表するとともに、webOS事業を終息させる計画を明らかにした。
PC市場で世界最大シェアを誇るHPの判断は、業界関係者の多くにとって、まさに「想定外」の出来事であったといえよう。
そして、首位のHPがこうした決断に踏みだそうとしていることは、それだけPC事業の収益性が悪化していることの証しだともいえる。
HPでPC事業を担当している部門は、Personal Systems Group(PSG、日本ではパーソナルシステムズ事業)である。
HPが発表した2011年度第3四半期累計(2010年11月〜2011年7月)決算では、PSGの売上高は前年同期比3.3%減の294億5600万ドル、営業利益は21.0%増の17億7200万ドルとなった。営業利益率は5.8%となっており、製造業において事業存続のボーダーラインと位置づけられることが多い営業利益率5%の水準は維持していることになる。
だが、PCと同じハードウェア事業であるプリンター事業と比較すると、その収益性の低さがわかる。
プリンター事業を担当しているImaging and Printing Group(IPG、日本ではイメージング・プリンティング事業)部門の第3四半期累計の売上高は同3.7%増の194億6200万ドル、営業利益は0.8%減の31億6500万ドルとなり、営業利益率は16.3%となっている。
同じハードウェア事業という点で比べても、営業利益の差が明確なのだ。
同社の他の事業を見てもその差は歴然だ。第3四半期単独の営業利益率は、サービス事業で13.5%、エンタープライズサービス・ストレージ&ネットワーキング事業が13.0%、フィナンシャルサービスが9.4%となっており、PC事業の収益性が極端に低いのがわかる。ソフトウェア事業の営業利益率19.4%とは、実に4倍近い大きな差がある。
PC事業は、規模が最大の武器になると言われる。コモディティ化したといわれるPCは差別化が難しく、大量調達によって部材コストを低減し、これをベースに価格競争力を発揮することが基本的なビジネスモデルであるからだ。しかし、年間6420万台(米IDC調べ)ものPCを出荷し、2位につけるDellの4340万台に2000万台以上の差をつける世界最大のPCメーカー、HPでさえも営業利益率の低さに頭を痛めているという構図が浮き彫りになる。しかも、今後は新興国でのPC需要拡大が見込めるものの、先進国に比べて低価格製品が主力となり、さらなる収益性の悪化も懸念される。数は増えても利益は減るという方向が明白なのだ。
その点で、上場企業として収益性の悪い事業を切り離すというのは当然の決断ともいえよう。
webOS事業の終息に関しても、同様の観点から見ることができる。