富士通研究所は9月26日、資源プール化アーキテクチャに基づきクラウドコンピューティング環境に最適化した次世代サーバの試作に世界で初めて成功したと発表した。
資源プール化アーキテクチャは、ファブリックコンピューティングとも称される技術であり、同社では「高性能と柔軟性を同時に実現し、新たなICTサービスの創出が可能になる技術」と位置づけ、2013年度の実用化を目指しているという。
資源プール化アーキテクチャは、ICTの構成要素を高速ネットワークに接続してシステムを構築。CPUやHDDなどのハードウェアの間を高速なインターコネクトで結合することで、構成を柔軟にオンテマンドで変更できるようになる。そのため、CPUやメモリ、HDDを自由に組み合わせて任意のシステムを構成、必要とする性能や機能にあわせてストレージを構築できる。
「これまでのデータセンターで活用されるサーバ、ストレージ、ネットワークは、ウェブサービスを効率よく提供することには適していたが、クラウドを提供するデータセンターに求められる役割が大きく変化し、新たなサービスを提供するために、バックエンド技術の重要性が高まっている。大量のセンサから発信されるビッグデータを、効率よく、柔軟に処理することが求められている。高いI/O性能が求められるデータベースやサーバのローカルディスクを活用する大規模データ処理ニーズに対しては、従来のクラウドシステムでは性能要件を満たせない。今回開発した技術は、こうした要求にも柔軟に対応できる次世代サーバだ」(富士通研究所 取締役の久門耕一氏)
試作したサーバでは、CPUプール部のほかに、インターフェースとスイッチで構成するディスクエリアネットワーク部、インターフェースと多数のHDDで構成されるディスクプール部を1つのラックに搭載。従来のウェブサービスに適した一般的なシステム構成と比較して約4倍のI/Oスループット向上を達成したほか、実アプリケーション実行時では約40%の性能向上を達成したという。
また、負荷変動の予測が難しい新規サービスでは、システム構成を柔軟に変更できる特長を活かし、キャパシティプランニングを不要にできるという。
さらに、ワークロードの変動にあわせて、同じICTインフラを使用しながらもサーバやストレージの構成を変化させることができ、データセンターの利用率向上が図れるとしたほか、CPUやHDDなどのハードウェア部品が故障しても、故障部品の接続を切り替えることで部品交換の頻度を下げられるため保守コストも低減するとしている。これらの観点から次世代型グリーンデータセンターが構築できるとしている。