その答のひとつは「エンタープライズ級」のHadoopソリューションであると、NetAppのあるマネージメントは答えてくれた。現在は実験的な色彩が強い企業内Hadoopの活用も、いずれはミッションクリティカルな位置づけになることが十分に考えられる。そうなるとHadoopのジョブにもサービスレベル保証が必要となってくる。「いつかは終わる」のではなく「一時間以内で確実に終わる」ことが求められる世界では、ストレージ自体の信頼性も重要になるはずだとNetAppは考えている。特に、メタデータ(データに関するデータ)の障害は全体的な影響が大きいため、ストレージレイヤーでの信頼性の重要性が高いと述べている。
Hadoopによる非構造化データの分析に加えて、従来型の構造化データの分析においては、RDBMSベンダーのTeradataとのパートナーシップを強化している。Teradataはデータウェアハウス上で数ペタバイト級の分析を行なう顧客を多数抱えており、大容量の構造化データ分析ではリーダの地位にある。
比較的課題が少ないB(メディア配信)分野
B(メディア配信)の分野は、NetAppにとってはテクノロジ面で比較的御しやすい領域だ。モジュール性が高い水平スケーラビリティ中心型のNetAppの製品体系は、もともと超大容量・高帯域幅のアプリケーションに向いている。既に、公共、メディア・アンド・エンターテインメント、エネルギーなどの業界では地位を確立している。そのため、同社の課題はテクノロジではなく、Go-To-Market戦略面になると考えられる。その意味で注目すべき動きは、2011年3月におけるLSI Logicのストレージ事業(Engenio)の買収だ。正直、この買収でNetAppは革新的なテクノロジを入手したわけではないが、OEMビジネスを中心とするチャネル、販売要員、顧客ベースを獲得できたことには意義がある。
C(コンテンツ)分野の機会追究に備えた企業買収
C(コンテンツリポジトリ)の分野はどうだろうか。ここでも、Bの分野と同様にストレージハードウェアの領域ではそれほど大きな課題はなさそうだ。しかし、この領域では、ストレージアクセスのソフトウェア層における不連続な変化が起こりつつある。従来型のファイルシステムは超大規模なコンテンツ管理には必ずしも適していないからだ。たとえば、ウェブと相性のよいRESTful型のアクセスも必要となる。クラウド環境向けの管理インターフェースであるCDMI(Cloud Data Management Interface)のサポートも必要となるだろう。
この領域では、2010年4月に買収したByCastのオブジェクト・ベース・ストレージのテクノロジが重要だ。NetAppはこのテクノロジを自社のファイルシステム「ONTAP」上に構築されたオブジェクト・ストレージ・ソフトウェア・ソリューションである「StorageGRID」上で活用している。StorageGRIDによりコンテンツへのタグ付け、NAS型のファイルI/Oに加えたRESTful型のアクセス、複数サイトにまたがったリポジトリ、ポリシーベースのデータ管理などの付加価値が提供される。
現在ではほぼ唯一と言っていいストレージ専業ベンダーとなったNetAPP。その「ビッグデータ」戦略はきわめてフォーカスが定まっており、テクノロジ的な裏付けもしっかりとしていると筆者は考える。同社が「ビッグデータ」の波に乗れる可能性は高いと言えそうだ。