ビッグデータの課題と機会を探る本特集「ビッグデータとは何か」では、テックバイザージェイピー代表の栗原潔氏が、関連技術やベンダーの戦略を解説します(編集部)
今回からは、ビッグデータに対する主流ベンダーの具体的戦略について分析していこう。
まずは、NetAppだ。筆者は2011年6月にNetAppの年次アナリストイベントにおいて、同社のマネージメントと同社戦略に関してインタビューする機会を得た。本稿では、その中から一般に公開可能な情報をまとめた。
ABCでとらえるビッグデータ市場
本特集でも述べてきたように、「ビッグデータ」の応用分野は分析に限られた話ではない。「『ビッグデータ』すなわちMapReduce/Hadoop」という発想が見られることがあるが、これは間違いとは言えないものの「ビッグデータ」の可能性をやや狭くとらえすぎと言えるだろう。
NetAppは、「ビッグデータ」市場を、分析(Analytics)、メディア配信(Bandwidth)、コンテンツリポジトリ(Contents)の三領域に分けた戦略立案を行っている。ABCということで覚えやすいと言えよう(“B”の部分はやや強引だが)。同社は、ABC各領域ごとのビジネス機会規模予測も行っているが、そこではコンテンツリポジトリ分野が最も規模が大きい領域になっている。確かに、ストレージベンダーの立場から言えば、まだキャズムを越えたとは言い難いAの世界よりも、確実なソリューション販売が見込めるCの世界の方がパイとしては大きいかもしれない。全体的には30%以上のCAGR(年平均成長率)を見込んでいるようだ。
A(分析)分野における課題とNetAppの回答
一般に、「ビッグデータ」分析の分野におけるストレージベンダーの課題として、ストレージ・ハードウェア・レイヤーでの差別化が困難であるという点がある。
MapReduce / Hadoopはそもそもその設計思想として障害対応機能を備えている。分散したジョブが障害を起こした場合には、MapReduceエンジンが別のノードでそのジョブを自動的に再起動する。つまり、ストレージ機器自体の障害対応機能はあまり問題とされていないのである。極端なことを言えば、ベアドライブさえあれば後は上位ソフトウェアが責任を持ってくれる。たとえば、Googleのインフラでは外部ストレージ機器は使用されておらず、マザーボード上に安価なHDDを搭載することで対応しているようだ。
このような世界でどのようにしてストレージベンダーは差別化要素を提供できるのか。