企業のIT部門は常に新しい技術をどう取り込むかという課題を抱えている。たとえば、数年前からのサービス指向アーキテクチャ(SOA)がそうであり、この2年でいえば、インメモリコンピューティングもその典型例と指摘できる。ただ、この2~3年のスパンで見ると、これまでとは異なる動きが出てきている。コンシューマライゼーションだ。
従来の企業ITを取り巻く技術が、いわば企業の内側から外側へと拡大していたのに対して、コンシューマライゼーションの流れは真逆である。企業の外側から内側に浸透していくものだ。この1年でいえば、「私物解禁」というキーワードでも表現されるBring Your Own Device(BYOD)のトレンドもコンシューマライゼーションの一つだ。
このコンシューマライゼーションという考え方を拡大して考えた時に、企業に大きく影響を与えているのが、パブリッククラウドとソーシャルメディアだ。
この二つに対して企業のIT部門として、どのように取り組むべきなのか――。こうした課題に対する一つの答えとして、アイ・ティ・アール(ITR)は10月18日、パブリッククラウドとソーシャルメディアを活用してビジネス成果を獲得するための方策をまとめたホワイトペーパー(PDF)を公開した。
パブリッククラウドとソーシャルメディアは少ない投資額で多くのビジネス価値を創出する一つの手法として大きな期待を集めている。日本企業もその価値を認めてはいるが、企業のIT部門はセキュリティやコンプライアンス上の懸念から、否定的もしくは消極的な姿勢を見せているのも事実だ。
ITRは、そうした懸念を払拭してパブリッククラウドとソーシャルメディアをより戦略的に活用してビジネス貢献すべきと推奨。そのポイントとして「IT部門のマインドセットの変革」と「革新的ITツールの利用」という2点を挙げている。
この1年で高い注目を集めているのが、タブレット端末「iPad」のビジネス利用だ。この状況はIT部門ではなく、経営トップや事業部門主導で導入された企業が多いというのが実態という。
その背景には、ビジネスパーソンの思考回路がビジネス起点であるのに対して、IT部門側はセキュリティや管理面などのマネジメント起点があるとITRは指摘している。IT部門は自社のITポリシーやIT標準を前提とした“評価と審査”から新規導入を判断するのが一般的だからだ。
ITRは、IT部門のそうしたマインドセットを自ら転換して、よりビジネスに貢献すべきであると説明している。
もちろんIT部門としては、セキュリティとコンプライアンスを守ることが必要だ。そのためには、技術的あるいは論理的に裏付けがあるITツールを備えることが必須とITRは主張している。
ITは日々進化しており、革新的ITツールを利用することで、これまで困難とされていた問題を解決できることもあるだろう。その実例としてITRは、ファイアウォール市場を挙げている。
すでに成熟していたと思われていたファイアウォールだが、ユーザーやグループ、アプリケーション単位でネット利用を制御できる製品が市場に登場している。ITRは、こうした革新的な技術や製品を採用することで、IT部門のビジネス指向を後押しできると説明している。