スマートデバイス増加と同時にソーシャル化--日本IT市場予測10項目(後編)

田中好伸 (編集部)

2011-12-31 14:35

 2012年の日本のIT市場は、クラウド、モビリティ、ビッグデータ、ソーシャルネットワークが「第3のITプラットフォーム」となって市場構造に“トランスフォーメーション”をもたらす――。IDC Japanは2012年の日本IT市場でキーとなる技術や市場傾向、ベンダーの動きなど主要10項目をまとめている(前編はこちら)。

7.2012年にはビッグデータを活用したビジネスアナリティクスのリーダーの座をかけた競争のスタートダッシュの年になる

 2012年には、ビッグデータに対する注目が集まり、企業にとってはビッグデータの活用を目指したアナリティクスへの投資が重要になると説明する。背景のひとつには、コスト面の制約が少なくなったこと、そして飛躍的に進歩した大規模データの活用技術が身近になったことが挙げられるという。企業のビッグデータ活用はすでに十分実用的な段階を迎えたと分析している。

 ビッグデータ活用のニーズは、データを分析し、意思決定の確実性を高めたいという期待から発生している。データの可視化の最終的な目的は「意思決定の支援または自動化」とし、意思決定に寄与しないのであれば、データの可視化に有限のIT予算を投じる重要性を企業は見いだせないと説明する。

 バブル崩壊後、リーマンショックや大震災、円高、内需と雇用の縮小、経済の途上国へのシフトとグローバルビジネスの複雑化など、生き残りをかけた企業戦略を遂行する上で、意思決定上の不確実性が高まっているという。企業がビジネスでの競争優位性を獲得して、大きなリスクを未然に回避するための課題解決のひとつとして、ビッグデータ活用によるアナリティクスが企業ITの重点領域として積極的な投資対象になるとしている。

 ビッグデータの活用が進むことで、市場競争はより激しくなる。ビッグデータ活用に投資しない企業は市場競争で敗北し、撤退せざるを得なくなる事例も出てくると表現する。

 こうした背景を踏まえて、2012年にはビッグデータを活用したアナリティクスビジネスのリーダーの座をかけた競争のスタートダッシュの年になると予測する。インフラストラクチャ、データ管理、アナリティクス/ディスカバリ、意思決定支援/自動化インターフェースという4つの階層を1つのスタックとして提供するビッグデータプラットフォームソリューションを用意できるベンダーが、リーダーの座の獲得に向けて大きく他社を引き離すことができるだろうと説明する。

8.日本企業の海外ITシステム構築と運用を巡るベンダー間の競争が激化する

 2011年は大震災と原発事故、タイの洪水、欧州での政府債務危機などのさまざまなカントリーリスクが顕在化した1年でもあった。これまで日本国内を中心としたビジネスを展開している企業でも、生産拠点や販売拠点、研究開発拠点の海外進出を本格化させるところが増加している。日本国内の経済の低成長の見込み、中国を中心とした新興国の大幅な経済成長が、企業の海外進出を加速させている。海外に進出する企業の規模や業種も多様化し、進出先も中国からほかのアジア諸国に広がってきている。

 企業のビジネスがグローバルで多様化するということは、ビジネスを支えるITもまた多様化することだ。ITで支えられるビジネスでも海外の比重が高まっていくことでもある。

 これまで日本企業の海外拠点のITの構築と運用を支えてきたのは、それらの企業の国内システムを担当している国内ベンダーだった。すでに多くの国内ベンダーは大手や準大手を中心に、国内企業の海外進出需要を取り込もうとして、海外拠点の設立や海外ベンダーとの提携などの施策を進めている。

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