東日本大震災から1年がたった2012年3月11日、東北地方を中心に各地で慰霊や追悼の催しが行われた。
宮城県名取市閖上にある日和山には仮設の神社が設置され、多くの人々がこの地でなくなった家族親類や友人のため、14時46分に黙祷した。
名取市閖上はもともと住宅が密集した土地だったが、地震による津波で多くの住宅が破壊された。現在は住宅の基礎部分を除き、当時の生活を示す跡はほとんどない。
石巻市や名取市はがれき処理が進んでいる方だが、重要な課題もある。がれき処理が「進んだ」というのは、ばらばらのがれきを集め、まとめて置いているというだけだ。進んではいるが、終わってはいない。今後、このがれきをどのように処理していくか、現在も議論が続いている。
宮城県東松島市は、震災から1年がたった今も大量のがれきが散乱したままの状況だ。「取り残されたような街になっている」と、トライポッドワークス代表取締役社長の佐々木賢一氏は危惧する。
ITによる復興支援プロジェクト「ITで日本を元気に」の発起人代表でもある佐々木氏は、「物資など緊急性の高い支援が必要なくなった今、パソコンやiPadの提供といったインフラから、ソフト面での支援をテーマにしたい」とする。
ソフト面での支援とは、地域コミュニティとITの架け橋となる人材の育成および活用を指している。
被災地域向けの支援制度がある程度整いつつある中で、その存在を知らぬまま過ごす被災者も数多い。そうした層を対象に、たとえば調べてほしいことを代わりにウェブで検索する「検索代行」や、ネット環境がなかったりIT機器の使い方が分からなかったりする人を対象に、ネット通販で生活必需品を代わりに購入する「購入代行」のような人材を、仮設住宅の集会所などに定期的に配置するという考えだ。東北地方の移動手段を支えた自動車の多くが津波で流されており、仮設住宅などを対象に検索・通販代行を提供することで、利便性の提供だけでなく、高齢者の安否・健康確認も兼ねることができよう。
2011年4月に有志で始めた同プロジェクトは、この1年でパソコンや通信機器など約500台を提供してきた。その様子の一端は昨年9月に「IT環境の整備を望む仮設住宅--IT業界はリーダーシップを示せるか」として紹介したが、その記事の後半でリーダーシップについての考えを示した。
現場で対話を重ねて課題を解決し、ボトムアップの力で地域社会を支え、変えていく−−取材の間、そんな様子や機能を端的に示す言葉はないかと考えていた。9月12日、帰京する新幹線の中ではたと頭をよぎった言葉がある。それは「リーダーシップ」だ。
人材を前面に押し出した支援が始まる2年目。多くの支援者が課題に直面し、リーダーシップを発揮して解決していくだろう。佐々木氏の言葉が印象に残る——「あまり頑張りすぎないようにしましょう。長く続けることが大切です」