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医療崩壊の危機を救う--情シス担当大学職員の工夫

怒賀新也 (編集部)

2012-05-08 12:00

 福岡県の久留米大学病院は、医師や看護師の業務負担軽減をめざし電子カルテを導入する。情報システムを担当する下川忠弘氏は、導入にあたっての状況について「医師や看護師など現場が疲弊していた」と振り返る。「検査伝票が届かない」「ナースコールに振り回される作業動線」など医師や看護師の業務負担は重く、訴訟リスクがあることによるストレスなども相まって、多数の離職者を出す病院も多いようだ。

 せめて、医師や看護師の雑務を減らし、本来の業務に集中する職場環境をつくろうと大学側は考えた。以前から議論があったが、コストの問題で2年間も凍結していた電子カルテの導入に動くことになった。久留米大学の電子カルテ導入プロジェクトでは、コンサルタント任せになりがちなシステム導入を、発注側である病院の担当者が積極的にリードした点で、システム導入を検討する企業にとって1つの参考になる事例だ。

久留米大学で情報システムを担当する下川氏
久留米大学で情報システムを担当する下川氏

 電子カルテ導入について、なんとか理事会での承認を取り付けた。次の一歩は病院内の業務の可視化だったという。通常は、このフェーズからコンサルタントの力を借りるが、下川氏はここで「As-Is 3点セット」と呼ぶ手法を使い、自ら現状の業務の問題点を明らかにしていった。

 As-Is 3点セットの3点とは、業務環境図、業務記述書、業務フロー図の3つ。現状業務の内容、手順、ルール、流れなどの全体像を明らかにすることが目的だ。標準化することで、利用者による書式のばらつきを吸収でき、将来的には業務マニュアルへと育てることも視野に入れた。これを基に、下川氏らのプロジェクトチームは業務改善の要望を含めた提案依頼書を3カ月で作成。それを基に、複数ベンダーからソリューション提案を受けることにした。この手順にかかわった病院職員は250人を超え、5000に及ぶ要求項目が挙がってきたという。

導入した電子カルテの画面 導入した電子カルテの画面
※クリックすると拡大画像が見られます

 電子カルテ導入の一般的なメリットは、診療情報の開示といったインフォームドコンセントの向上や診療待ち時間の解消、カルテ搬送作業や転記作業の削減、院内ネットワークによる情報伝達の緊密化などだ。さらに病院経営の観点でも、省スペース化や診療報酬請求業務の合理化などが図れる。

 その上で、導入する際の要件として、電子カルテの機能定義にまだまだあいまいさがあると判断したことから「カスタマイズを前提とすること」を挙げた。さらに「レスポンスの速さ」「見やすさ」「経営支援」なども加えた。実際にレスポンスは「3秒以内」を実現できた。

 電子カルテの選定は、20人で構成される推進委員会が担当。うち医師、看護師、事務担当者、IT担当者の4人がプロジェクトマネジメントを務めた。施策の重要性に応じて重み付けをし、ベンダー選定の指標にした。議論の結果、電子カルテシステムとして、コア・クリエイトシステムが提供する「IZANAMI」を採用した。基盤技術に、米インターシステムズの日本法人が提供する、高速さを特徴とするオブジェクトデータベース「Caché」を採用している。

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