一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の新会長に、ソニーの取締役代表執行役副会長である中鉢良治氏が就任した。
2012年6月1日に行われた定時総会で選出され、その後、報道関係者を対象に就任会見を行った。
会長に就任した中鉢氏は、「IT・エレクトロニクス業界が持つイノベーションの力を活用し、東日本大震災からの復興と、日本経済の再生に向けた課題に全力で取り組んでいく。ITを活用した社会全体のスマート化により、安心、安全で豊かな暮らしを実現するとともに、国際競争力強化と新市場の創出に向けて積極的な活動を行う。また、省エネ、創エネ、蓄エネ技術や、安心安全な社会システムを支える情報処理・情報通信技術の普及と促進を図り、低炭素社会の実現に貢献していく」としたほか、「エネルギー、医療・ヘルスケア、農業、教育などの他分野と融合に向けて関係産業と連携し、新たな市場の開拓、振興に取り組む」などと語った。
JEITAの新会長に就任した中鉢良治氏
また、「電力不足を経験した結果、社会システムが抱える課題の解決策のひとつとしてスマート化という新たな流れが生まれた。IT・エレクトニクスの技術を活用して、ポテンシャルをあげる新産業を創出するといったことも可能であり、農業、ヘルスケアといった領域でも新たなITの利活用の可能性が残されている。日本のIT・エレクトロニクス産業がこうした力を発揮し、イノベーション、投資、産業化という勝利の方程式を取り戻すことで、自動車産業とともに日本の3番、4番を再び担っていけるように努力したい」と語った。
JEITAの2012年度の事業活動としては「震災からの復興と日本経済の再生」を基本方針に掲げ、主要事業として、IT・エレクトロニクス産業を取り巻く多岐に渡る課題解決に向けた「政策提言」、京都議定書目標達成と低炭素社会実行計画の具体化などの「低炭素社会の実現に向けた取り組み」、スマートフォンやタブレットPC、IPTVなどを端末とするクラウド環境を活用した新たな情報サービス関連市場や、医療や農業、エネルギーといった他分野との融合などを目指す「市場創出」、紛争鉱物資源などの規制への対応やWTO情報技術協定の拡大などの「国際連携・国際協調」、グローバルマーケットの状況を確実に掌握するための「調査・統計」、レアアースへの対応や人材育成事業、リサイクル推進への取り組み強化などの「基盤強化」、CEATEC JAPANの活性化やIT・エレクトロニクス業界の情報発信などによる「情報発信の強化」を掲げた。
一方で中鉢新会長は「日本は歴史的な円高のなかにあり、対ドル、対ユーロのみならず、対ウォンの状況からみても厳しい。この業界は為替に対する抵抗力が強くはない。政府には世界水準の事業環境の確立に向け、イコールフィッティング確保のための整備をしてもらいたい。これにより、成長が著しい新興国のボリュームゾーンに対する戦略的なビジネス展開を行うことができる」などと提言。
さらに電力問題について「今年夏の電力確保は、当業界のサプライチェーン全体に関わる切実な問題であり、日本での生産活動維持の観点からも、低廉で安定的な電力の供給は基本的な要件。昨年は休日シフトや関西地区への事務所移転などを行った企業もあるが、今年は関西地区での電力供給懸念が高まっている。こうしたことを繰り返すことは、日本の製造業にとっては問題がある。日本で定着して仕事ができる環境を政府に要求したい」などとした。
また、「社会保障と税の一体改革を確実に進めていくことが必要。その基盤となるマイナンバー制度を進め、ここにITを活用することで、国民生活における利便性と効率性の高い社会を実現できる。また、公共データの民間活用などの2次利用促進を図ることで、さらなる国民サービスの向上につなげることができる」とした。
さらに、「TPPへの交渉参加が表明されたことは、わが国産業の国際競争力強化と海外諸国との戦略的な互恵関係の構築につながるものであり、大きな前進だといえる。WTO ITA改定交渉開始の合意についても、早期妥協に向けた活動を積極的に推進する。ITAのみならず、TPP、日EUのEIA、日中韓のFTAなどの早期交渉開始や締結に向けての働きかけを引き続き行う」などとした。
なお、新年度のJEITA筆頭副会長には東芝の佐々木則夫社長が就任。そのほか、副会長には間塚道義氏(富士通会長)、片山幹雄氏(シャープ会長)、川村隆氏(日立製作所会長)、大坪文雄氏(パナソニック会長)、下村節宏氏(三菱電機会長)、矢野薫氏(NEC会長)、海堀周造氏(横河電機社長)、上釜健宏氏(TDK社長)が選出された。
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