HANAはSAPの全製品を支えるDB基盤になる--SAPジャパン 馬場氏

五味明子

2012-06-05 17:52

 SAPジャパンは6月5日、インメモリデータベース「SAP HANA」の最新サービスパック「SAP HANA SP4」の提供開始を発表した。SAP HANA SP4は5月に米オーランドで開催された年次イベント「SAPPHIRE NOW 2012」でその詳細が発表されているが、「単なる分析専用のデータベースではなく、SAPの全製品を支えるデータベース基盤としてあらたなスタートを切った記念すべきリリース」とSAPジャパンの馬場渉氏(リアルタイムコンピューティング事業本部長)はその意義を強調する。

SAPジャパンの馬場渉氏
SAPジャパンの馬場渉氏

 SAPは今年で創業40周年を迎える。これまでの40年を支えてきたのがR/3に代表されるERPやアプリケーションビジネスであるのなら、これからの40年を支える基盤技術となるのがHANAだと馬場氏は言う。2009年のリリース当初、「High Performance Analytics Appliance」とIntelハードウェアに最適化したアプライアンス上で動作するデータベースという位置づけだったHANAだが、「それはもう過去の話。現在は略称なしの"HANA"が正式名称」(馬場氏)とする。

「昨年秋、当社の経営会議でHANAを分析専用のデータベースとして扱うか、SAP全製品の基盤データベースとして位置づけるかを話し合った。ERPやクラウドの担当者からは“インメモリデータベースを基盤にするなんて考えられない。普通のデータベースでやってほしい”という反対意見も出たが、最終的には全社でHANAを基盤プラットフォームにしていくことで一致した」(馬場氏)

  • SAPが注力する領域は5分野

  • HANAが適用される領域は拡大している

 HANAは半年に1回のリリースを目指して継続的な機能拡張が行われている。今回発表されたSP4のハイライトは、

分析用途からアプリケーション開発を含む統合データベース基盤への進化

  • ビジネスアプリケーション向け関数群および予測関数群の追加/機能強化
  • 予測分析のためのプラットフォーム拡張として、統計言語「R」統合機能の正式サポート、PAL/BFLアルゴリズムの追加
  • 非構造テキスト検索と分析
  • HadoopおよびMapReduce連携のサポート

ミッションクリティカルな運用保守性/可用性への対応

  • インストール、アップデート&パッチ適用、モニタリング、バックアップ&リカバリ、セキュリティなどデータセンターオペレーションの改善
  • データ転送機能の強化
  • SAP Landsacape Transformation(SLT)によるHANAシステムのリアルタイム統合

 ここで馬場氏は「個々の機能だけを見ると、すでに実現しているデータベースはいくつもある。だが、バランスよく簡素化してすべてを実現しているプラットフォームはない。HANAは技術的にこれらの機能の統合を果たした」点を強くアピールする。

  • HANAによるシステムランドスケープの簡素化

 なかでも馬場氏がとくに強調したのは「OLTPとOLAPの垣根を壊すプラットフォームとしてHANAが成長しつつある」という点だ。従来、OLTPとOLAPを同じDB基盤で稼働させることは無理だとされがちだったが、馬場氏は「そもそも情報系においても、レポーティング機能や計画、戦略シミュレーションなど、用途ごとにデータベースが必要とされていた」と、無駄にデータベースが乱立している状態が続いていると指摘。そしてHANA SP4は「少なくとも情報系(データウェアハウス)に関してはHANAの上で統合されたデータマート環境を構築できる。構造化データだけでなく非構造化データも含めて蓄積、検索、分析が可能」としている。

 もうひとつ、HANA SP4で興味深い点を挙げるとするならR言語との相互運用性の強化だろう(関連記事:統計解析のためのR言語とは)。もともとオープンソースの統計解析言語として幅広いユーザー層をもっていたR言語だが、「HANAに搭載されるなら、いままでの統計しかできない他社の環境からHANAに乗り換えたい」とするユーザーが非常に多いと馬場氏。

 SP4では、

  • Rをスタンドアロンアプリケーションとして利用する構成:HANAとRの間でデータをやりとりするブリッジとしてRHANAパッケージを提供。HANAにもRにも特別な拡張や変更はいっさい必要なし
  • HANA DBの内部でRのスクリプトを実行する構成:HANAのカリキュレーションエンジン内にRのコードを埋め込んで処理を実行

といった構成をとることが可能となっている。HANAとRの連携強化により、リアルタイム分析環境の整備がより進むことが期待される。

  • Rをスタンドアロンアプリとして利用する構成

  • HANA DB内部でR Scriptを実行する構成

HANAはSAPの全製品・サービスを支えきれるか

 5月に行われたSAPPHIRE NOWでは、はじめての“ERP on HANA”として「Business One OnDemand」がHANAを基盤として動作するデモ(β版)が公開された。もっとも、このデモを見た一部の顧客から「ERPがHANA上で動くというのはBusiness Oneのことだったのか」と問われたという。これに対し馬場氏は「Business Oneはあくまでデモ環境。半年後のSP5では、ERP 6.0がHANA上で動いているところをお見せする。また来年前半にはCRMなどのビジネススイートもほぼHANA上で動いていることになる」と明言する。

 すべての業務アプリケーションの基盤データベースとして、SAPの次の40年を支えるプラットフォームとして生まれ変わったSAP HANA。SAPの全製品、全サービスというずっしりと重たいポートフォリオをHANAが本当に今後も支えきれるかどうかは、半年後のSP5リリースまでにSP4が示す実績に大きくかかっている。

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