情報通信技術の最新状況を広く紹介するイベント「Interop Tokyo 2012」が6月13日、千葉市で開幕した。初日の基調講演では、グーグルのエンタープライズ部門でマネージングディレクターを務める阿部伸一氏が「Discover データ活用が導くあらたな世界へ」との表題で登壇。地図情報など地理空間データがもたらす新たな可能性を解説した。
グーグルは、人々の生活様式を改善することを目指し、検索に始まり、さまざまなサービスを提供してきた。ITはさまざまなものを発展させてきている。手紙というコミュニケーション手段はファクスなどの形式も加わり、手紙を模倣した電子メールが登場し、そこにソーシャルメディアが出現した。阿部氏は「ソーシャルメディアは、これまでの課題だった組織の壁をなくしたり、壁の位置を変えたりできるため、社会の変革の原動力になる」と指摘する。
グーグルは従来、コンシューマー向けのサービスを展開してきたが、最近は、この領域で培われてきた技術やノウハウを加工し、エンタープライズ向けに提供している。「Google マップ」もその一つだ。
日立建機の事例では、販売した重機の稼働状況を地図上に表示し、見える化し、データをクラウドで集約。いつでも、どこでも、だれもがアクセスできるようにした。日立建機では、景気が好調な発展途上国に重機を輸出していたが、このシステムにより、その国では稼働率が下がっていることがわかった。
つまり、景気は過熱し、輸出は継続しているものの、重機を使う工事は減ってきていることを示していた。「地図情報を活用し、時系列で観察することで、景気の変動が見えてきた。ここには新たな“気づき”、Discover(再発見)があった」
「Google マップなどの効果により、インターネットで地理空間情報をうまく活用できるようになった。電子メールがSNSに発展したことで機能や効用、影響力はジャンプアップしたのだが、地図でも同じようなことが起こりうる」
Google マップは、日本では多くの地域で詳細な地図を閲覧することができるが、世界各国を見ると未だ十分に対応していないところもある。しかし「Google Map Makerというツールを使用すれば、地図を容易に形成していくことができる。ユーザー側はGoogleから一方的に地図サービスの供給を受けるのではなく、多様な情報を地図に付加することが可能であり、情報の流れが双方向になることにより、イノベーションが生まれ、地図が一つのプラットフォームになる」
Google マップのビジネスへの応用は、通信事業者が携帯電話の基地局の配置を地図上で見える化している例もある。
「従来、このような見える化を実現するには多くの工数がかかり、容易なこととは言えなかったのだが、Google マップでは情報を組み合わせ、APIベースでプログラミングなしで実行することができる。当社はコンシューマー向けで練磨した技術をエンタープライズ向けに提供しているのだが、インターネットで活用するサービスは、複雑でなくシンプルで使いやすいこと、いつでも、どこでも、どこからでも使えること、あらゆるデバイスに対応していること」が重要になると説明する。
危機への対処でも、地図を利用した情報システムは効果を発揮している。2011年3月の東日本大震災が発生した際には、カーナビを搭載した自動車の動きが地図上に表示された。これにより、どの道路が通行可能であるかそうでないのかがわかる。
ある地点で自動車が流れが止まっているところがあった。ここに衛星画像を表示すると、その道の先に船舶が打ち上げられている様子が示され、なぜ車が進めないのかがわかったという。衛星画像は「震災以前、以後の状況を比較して示すこともできるため、復興や今後の防災強化に役立つだろう。さまざまな地理情報をクラウドで一元化すると、こんなこともできる」