アドビの「Edge Tools & Services」とOSSの深い関係

杉山貴章(オングス)

2012-10-03 12:22

 Adobe Systemsは9月24日に開催したテクニカルイベント「Create the Web」でウェブデザイナーやウェブアプリケーション開発者を支援する新しいツール群「Adobe Edge Tools & Services」を発表した。これは、ウェブサイトのデザインやウェブアプリケーションの開発に役立つさまざまなツールやサービスを「Adobe Edge」というブランドのもとで提供するというものである。

OSSの活用も目立つEdge Tools & Services

 Edge Tools & Servicesで提供される個々のツールは、それぞれが特定のタスクに的を絞ったシンプルなものとして開発されている。それがこのツール群の大きな特徴だが、もうひとつの興味深い点は、いくつかのツールがオープンソースソフトウェア(OSS)として開発されているということだ。

 これについて同社のDanny Winokur氏は、「一番の目的はユーザーが本当に必要とするツールを作り上げること。それには、コードへのコントリビューションという形でのフィードバックが受けられるオープンソースがよくマッチしている」と語っている。

 基本的なアプローチとしては、ツールの核となる部分はオープンソースとしてユーザー自らも開発に参加できるようにする。その上で、Adobeにとって強みとなるような機能については、付加価値として独自のカスタマイズを加え、Adobeの正式なプロダクトとしてリリースするという。

 現在のEdge Tools & Servicesには、OSS由来のツールやサービスとしてHTML、CSS、JavaScriptのコーディングに特化したコードエディタ「Edge Code」、モバイルアプリ開発フレームワーク「PhoneGap」によるウェブアプリケーションの構築環境をオンラインで提供するウェブサービス「PhoneGap Build」、ウェブフォントサービス「Edge Web Fonts」がある。ここでは、この3つのツールとサービスを例にして、オープンソースのプロダクトとEdge Tools & Servicesとの関係を見てみよう。

Adam Lehman氏
Adam Lehman氏

BracketsとEdge Code

 Edge CodeはOSSの「Brackets」がベース。Bracketsはウェブデザインとウェブ開発にフォーカスを当てたコードエディタである。HTMLやCSS、JavaScriptといったにウェブ標準技術のコーディングを対象としており、GitHub上でMITライセンスに基づいて開発が進められている。Create the Webの会場では、AdobeでBracketsとEdge Codeの開発を担当するシニアプロダクトマネージャーのAdam Lehman氏によるセッションで、このツールの紹介やデモが行われた。

 特徴的な機能としては、HTMLの編集中にJavaScriptの関数やCSSのプロパティをインライン編集できる“クイックエディット”や、ブラウザと連動して編集結果をリアルタイムに確認できる“ライブ・プレビュー”、JSLintによる構文チェックなどが挙げられる。Bracketsの使い方については、こちらの記事も参照していただきたい。

 Brackets自身がHTML、CSS、JavaScriptによって開発されているため、Bracketsを使うユーザーにとって自前での拡張がやりやすいという点も大きな特徴である。Lehman氏によれば、Bracketsの核となる部分は以下にあげるライブラリやフレームワークを利用して作られているという。

  • Twitter BootStrap
  • LESS
  • jQuery
  • Require.js
  • Mustache.js
  • CodeMirror

 いずれもウェブアプリケーションの開発者にとっては馴染みのあるものだろう。もちろん、拡張機能の開発には、これ以外にも好きなライブラリやフレームワークを利用できる。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  4. クラウドコンピューティング

    Snowflakeを例に徹底解説!迅速&柔軟な企業経営に欠かせない、データ統合基盤活用のポイント

  5. ビジネスアプリケーション

    AI活用の上手い下手がビジネスを左右する!データ&AIが生み出す新しい顧客体験へ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]