スロバキアのウイルス対策ソフトメーカーであるESETの最高経営責任者(CEO)、リチャード・マルコ氏は「ESETの最大の特徴は、開発者が自らの意思によって顧客起点での開発ができる点にある」と語る。
同社は1992年に設立されたマルウェア検出技術のパイオニア企業と位置づけられ、現在、全世界で1億人以上の利用者を持つ。日本では企業向けだけでも13万2000社への導入実績を誇るなど、高い評価を得ている。
マルコ氏にESETの取り組みと昨今の情報セキュリティの動向を聞いた。
--ESETの生い立ちを教えてください
ESETのリチャード・マルコCEO
ESETは1987年にウイルス対策ソフト「NOD」の初期版を開発し、スロバキア共和国となった1992年に法人として設立されました。それ以来、アンチウイルスソフトウェアの専業メーカーとして事業を拡大し、現在では世界5カ所にR&D拠点を、世界10カ所に販売拠点を持っています。
1998年には当社にとってエポックメイキングな製品となる、Windowsの32ビット版に対応した「NOD 32」を投入。さらに1999年から米サンディエゴに販売拠点を設置し、その後、世界中にディストリビューションネットワークを広げ、今では世界180カ国以上に1億人のユーザーを持っています。
グローバル展開はパートナーとの連携によって推進しており、日本では2003年からキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)が国内総販売代理店として当社の製品を扱っています。コンピュータウイルスの国際紙であるVirus Bulletinのウイルス検出100%アワードで業界最多の76回の受賞を獲得しているほか、(投資情報で著名な)バロンズ誌では急成長を遂げている会社として10年に渡りトップ10に入っています。
--R&D拠点は地域ごとに役割が違うのですか
はい、それぞれに役割があります。本社のスロバキアとポーランドの拠点がもっとも大きく、それぞれのR&D拠点は各地域に最適化した形でリサーチ活動を行っています。日本にR&D拠点はありませんが、機会があればそうしたことも検討していきたいと思います。
現在、日本ではキヤノンITSがユーザーサポートを行っており、顧客の声を吸い上げたり、ユーザーから検体の提供を受け、ウイルスラボを通じて製品の開発に反映させるといったことも行っています。キヤノンITSとのパートナーシップは10年以上に渡りますから、その点でお互いに強い信頼感があります。
--なぜ、自社で現地法人を設置せずにパートナー戦略としているのですか
米国でスタートした海外展開もパートナー展開であり、これまでにもうまくいっています。うまくいっているものを変える必要はないと考えていますし、これに変わるものも考えられません。