本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBMのVivek Mahajan専務執行役員と、OpenStack FoundationのMark Collier COOの発言を紹介する。
「グループウェアは企業におけるソーシャルビジネスプラットフォームの一部である」 (日本IBM Vivek Mahajan 専務執行役員)
日本IBM Vivek Mahajan 専務執行役員
日本IBMが3月12日、グループウェアとして確固たる顧客ベースを持つ「IBM Notes/Domino」にソーシャルメディアとの連携機能などを追加した最新版を発表した。同社でソフトウェア事業を担当するVivek Mahajan(ヴィヴェック・マハジャン)氏の冒頭の発言は、その発表会見で、グループウェアとソーシャルメディアの関係性について語ったものである。
同社がこの日発表したのは「IBM Notes/Domino 9.0 Social Edition(以下、Notes9)」。ソーシャルメディア機能を持つ企業向けソーシャルソフトウェアや基幹システムなどの外部システムから出力される各種通知をタイムライン画面に時系列で表示し、返答や承認といった外部システム上での操作をタイムラインから実行できる機能を追加したという。
この最新版のさらに詳しい内容については、既に報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ここではMahajan氏の冒頭の発言について掘り下げてみたい。
Lotus時代から受け継がれてきたNotes9は、5年ぶりのメジャーバージョンアップとなり、製品名にも「Social Edition」が加わって、グループウェアの代表格であるNotesにいよいよソーシャルメディアとの連携機能が本格的に追加された形だ。Notes側からみるとこう説明したほうが分かりやすいが、グループウェアとソーシャルメディアの関係性でいうとIBMの戦略はむしろソーシャルを前面に押し出しているようだ。
そのキーワードとなるのが、Mahajan氏の冒頭の発言にもある「ソーシャルビジネスプラットフォーム」だ。同氏によると、ソーシャルビジネスとは「単なるソーシャルネットワークを越え、ビジネスプロセスの変革に必要なテクノロジによって、全従業員の活性化を図るとともに、顧客に感動を与えること」とし、それを実現するソフトウェア群からなるソーシャルビジネスプラットフォームを提供するのが、IBMの強みだという。
同氏の冒頭の発言は、こうしたIBMのしたたかな戦略を背景にしたものである。確かに今回の会見では、最初にソーシャルビジネスプラットフォームの説明があり、その後にNotes9が発表され、その特長においてもソーシャルメディアとの連携機能の説明にかなりの時間が割かれていた。
興味深いのは、こうしたグループウェアとソーシャルメディアの関係性において、グループウェア分野で競合するマイクロソフトやサイボウズの戦略が、IBMとは逆にグループウェアにソーシャルメディア機能を取り込む方向で動いていることだ。