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「ソーシャルシフト」を実現する企業の条件とは--ループス斉藤社長

岡田靖 怒賀新也 (編集部)

2013-04-25 20:33

 「ソーシャルシフト」「BEソーシャル!」などの著書で知られるループス・コミュニケーションズ代表取締役の斉藤徹氏。企業のソーシャルメディア活用、ソーシャルシフトとはどのようなものなのかを聞いた。

社員一人ひとりの文化を変えていく

 企業におけるソーシャルメディアの活用は、いくつかの類型に分けられる。まず考えられるのは、公式アカウントなど(社長や市長・知事なども一種の公式アカウントと言えるだろう)による対外的な情報発信、すなわち文字通りのメディアとしての利用だ。それとは別に、社内のコミュニケーションやコラボレーションのプラットフォームとする使い方、さらに拡大して社員のみならず取引先まで参加させる例もある。また、顧客と企業とのコミュニティを作り上げ、リアルな絆と連動させるケースもある。

ループス・コミュニケーションズ代表取締役の斉藤徹氏
ループス・コミュニケーションズ代表取締役の斉藤徹氏

 「これらの使い方は、バラバラに使ってもいいし、組み合わせてもいいのです。ただし、これらを成功させるには、それなりのノウハウが必要。縦割りでガチガチな組織のままでは上手く行かず、企業哲学を社員一人ひとりに浸透させ、それぞれに十分な権限や情報を持たせ、自律的に動けるようにしていかないと難しいでしょう」と斉藤氏は言う。

 例えばメディアとしての利用であれば、「流行っているし、マスメディアに広告を出すより安価にできるし、まずは公式アカウントをやってみよう」と気軽に始める企業も多いはず。

 「しかしやってみると、担当者や担当部署はすぐに違和感を覚えるはずです。いくらコントロールしようとしても、ソーシャルメディア上の人々の反応はコントロールできるものではないと気づく。ここが岐路になってきます」(斉藤氏)

 それでもコントロールしようとして挫折し、「やっぱり使えない」となる企業もいれば、逆に「ソーシャルメディアには他のメディアとは本質的に違うのではないか」と考え、取り組み方を変える企業もある。

 次の段階、すなわちソーシャルシフトに進むことになるのは後者の企業だ。

 このような過程は、社内コミュニケーションや顧客コミュニティとしてソーシャルメディアを使っていても同様だろう。ソーシャルメディア上での活動はリアルタイム性が重要であり、かつ瞬時に多くのユーザーが目にすることになる。ソーシャルメディア担当者は、自社が社会の中でどのような存在であるか、どのようにあろうとしているのかを常に意識しつつ、社を代表する発言として受け取られることを念頭に置き、上司などに諮る暇もないまま発言し、他のユーザーからのコメントに対応しなければならない。

 「企業のあらゆる顧客接点がソーシャルメディア上に染み出していく中では、価値観やビジョンを皆が共有し、現場の人たちが上司の指示を待つのでなく自律的に動けるようにすることが不可欠となっていきます。その状態を実現するには、哲学の浸透、権限の委譲、ノウハウや情報の共有、いずれも欠かせません。いわばソーシャルシフトにおける3点セットです」(斉藤氏)

 経営理念や哲学といったものは、どうしても一人ひとりの理解が違ってしまいがちなので、それを全員に浸透させ共有していく必要がある。また、一人ひとりが決断力やリーダーシップを持つことも重要で、そうした教育も必要になってくる。

 権限委譲の重要性は言うまでもないが、各自が自律的に活動しつつも組織や企業が全体としてプラスの方へ向かうようにするには、情報を共有し、それぞれの人たちがどのように動いているかが見えるようにすることも大事だ。

 こうした状態は、多くの企業にとって既存の企業文化とは大きくかけ離れたものとなる。実現する上で最大の課題は、社員各自の文化を変えていくことだと斉藤氏は指摘する。

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