一歩先行くクラウド活用術

「セキュリティ懸念」に変化--広がるクラウド活用領域

末岡洋子 2013年06月19日 11時51分

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クラウド環境の利用が急速に進む


 クラウドがコンピュータパラダイムを変える技術として認知されるようになって数年、企業システムにおいてクラウドは着実に市民権を得ており、最近では基幹となる業務システムの領域にも進出しつつある。この連載ではパブリッククラウドを中心に市場の動向、利用事例、課題などを、経営と開発者の視点から見ていく。

 クラウドと一口に言われるが、その中味は大きく3つに分類できる。仮想化技術を利用してCPU、ストレージ、ネットワークなどのコンピューティングリソースをサービスとして提供するIaaS(Infrastructure as a Service)、ウェブアプリケーションなどのソフトウェア開発プラットフォームをサービスとして提供するPaaS(Platform as a Service)、ソフトウェアをサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)である。

 このうち、クラウドプロバイダが一般に向けて提供するコンピューティングインフラを利用したものを「パブリッククラウド」、仮想化技術などを利用して社内のデータセンター内などファイアウォール内でリソースのプールを構築する形態を「プライベートクラウド」という。その2つを組み合わせて利用するハイブリッド型も登場している。

 クラウドの長所はさまざまだ。技術を自社で持つことなく、インターネットを経由して利用するため、実装や設定など導入までの手間が簡略化されスピードが改善されること、成長や必要に応じて拡張できることなどがよく挙がるメリットだ。

 コスト削減については、すぐに効果を体感できる場合とそうでない場合に分かれる。つまり、クラウドの性質やソリューションの特徴と自社のニーズとの適合性を検証することなくしては、せっかくの革新的な技術も無駄な投資に終わってしまう可能性があるわけだ。

2017年には3.4倍の市場規模に


 連載の中心となるパブリッククラウドはもともと、米Amazon Web Servicesや、Salesforce.comなどの米国ベンダーが先駆け、米国中心に進んできた市場だ。

 だが、日本でも着実に受け入れが進んでいる。IDC Japanの調査によると、IaaS、PaaS、SaaSを含む国内パブリッククラウドサービス市場は2012年、年間44.8%増という成長率で拡大し933億円に達したという。2017年までの5年間、年間平均成長率27.8%増で成長し2017年には2012年の3.4倍の3178億円になると見込んでいる。

2012~2017年の国内パブリッククラウドサービス市場のセグメント別売上額予測(出典:IDC Japan)
2012~2017年の国内パブリッククラウドサービス市場のセグメント別売上額予測(出典:IDC Japan)

 パブリッククラウドでは、ハードウェアをそろえる必要がないため、初期導入コストが不要というメリットは大きい。リソース拡張が容易に実現するので、成長に合わせてインスタンスを増やしたいベンチャー企業、ピーク時とそれ以外のトラフィックの差が激しいような企業を中心に利用が進んできた。現在になり、トレンドは「クラウドファースト(Cloud First)」。新しいITの導入にあたり、最初にクラウドソリューションを検討するという考え方が急速に広がってきている。

 パブリッククラウドはこれまで、同一のハードウェアを複数ユーザーで共有することが多いなどの技術的な要因などから、セキュリティに対する懸念が持ち上がることが多かった。しかし、クラウドファーストの波が押し寄せている背景には、こうしたセキュリティへの懸念が緩和されつつある実情があるようだ。

 2010年あたりから、富士通やニフティなどの国内ベンダーが相次いでサービスを提供したことも関係している。セキュリティについては、クラウドプロバイダがSLA(Service Level Agreement)などの対策を打ち、導入事例が順調に増えているなど、企業がパブリッククラウドの導入を検討しやすい材料がそろってきている。

震災が変えたセキュリティの判断基準


 また、日本特有の事情としては、2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに、災害対策として、遠隔地にデータをバックアップできる点で、パブリッククラウドを評価する声も強まるようになった。「他人にデータを預けるのは怖い」という根強いパブリッククラウドへのネガティブなイメージが、震災により変化しつつあるという。

 用途も広がっている。これまで検証や実験目的での一時的、部分的な利用、重要性の低いアプリケーションなど低リスク領域が中心だったのが、最近では販売や在庫管理、生産管理、会計などの基幹システムやPOSシステムにも進出している。使い勝手とスペックの両方から、高機能化したモバイル端末と組み合わせて導入する事例も増えている。

 このような拡大傾向は今後も進むと考えられる。ID管理技術の米SailPointが米国、英国のIT部門トップに尋ねたところ、「基幹アプリケーションの3分の1がすでにクラウドに移行している」と回答している。この比率は2015年には2分の1、つまり2つに1つのアプリケーションがクラウドベースになると予想している。

 決定的な事情がない限り、日本も同じ方向に進むと考えられる。IDC Japanは、パブリッククラウド市場は、利用領域と利用量の両方で拡大していくと分析している。

 このシリーズ「一歩先行くクラウド活用術」では、企業がクラウドを活用してビジネスでの成功をつかむために必要な事柄を、実例を交えて紹介する。

 次回は、基幹システムでクラウドを活用している事例を取り上げたい。

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