IT部門がビジネス目標に沿った活動をしようとする際、アジャイルソフトウェア開発は、開発者がユーザーのニーズに合ったアプリケーションを作るのを容易にしてくれる。さらに、モバイルアプリ開発が増えてきている現在では、アジャイル開発手法の効果はさらに大きくなっている。
アジャイル開発が登場してからかなりの時間が経つが、アジャイル開発の協力主義、段階的開発、スピード、柔軟性といった特徴は、開発者にユーザーと協力しながらアプリケーションを開発させたいと考えているITリーダーにとっては好都合だ。この手法は、より厳格な従来の手法とは対照的だ。従来の手法では、ユーザーの要件をあらかじめ収集し、何カ月もかけて完全なアプリケーションを作る。ユーザーに届けられるアプリケーションが請求書の額に見合ったものかどうかは祈るほかなく、そのプロセスの間、要件が変化しないことを前提としている。
近年では、ビジネスリーダーは必要とするテクノロジーを、好きなクラウドプロバイダやSaaSプロバイダから買い上げることができるようになっている。IT部門がその存在価値を示すには、ユーザーと協力しながらエンタープライズアプリケーションを作ることで、ユーザーのニーズを満たす必要がある。さもなくば、外部のプロバイダとの競争に負けてしまう。
「今日では多くの場合、クラウドのおかげで、会社にはさまざまな選択肢がある。必要となる可能性のあるサービスはすべて、クレジットカードで買うことができる」と、HPのソフトウェア部門でアプリケーションライフサイクル管理担当シニアプロダクトマネージャーを務めるRaziel Tabib氏は言う。「IT部門は、より望ましいソリューションを提供するよう努力するしかない。IT部門が今の地位を維持したければ、ビジネスニーズににあった最善のツールを作らなくてはならない。開発者はエンドユーザーと協力して、ユーザーのニーズをしっかり満たす必要がある」
HPのソフトウェア部門は2013年に入って、アジャイル開発プロジェクトの計画と実行のためのSaaSベースのソリューションである「HP Agile Manager」をリリースした。さらに、部門自体がアジャイル開発の原則をいくつか採用し、例えば、18カ月周期だったリリースサイクルから、製品リリースや改善を毎月するように変更したという。
つまみ食い
しかし、特に世界中に開発者が散らばっており、アジャイルの仕事スタイルを導入することが難しい大規模組織にとっては、アジャイルを全面的に採用するのは困難だ、と同氏は警告する。
「どんな組織でもアジャイルソフトウェア開発宣言を読んで、次の日からスクラムミーティングを始めれば、何もかもうまくいくというわけではない」とTabib氏は言う。「われわれは、イスラエル、プラハ、ベトナムにエンジニアを抱えている。アジャイルの方法論の一部は簡単に取り入れられるが、大規模組織にとっては非常に難しいものもある」
それはそれでいいのだ、と同氏は付け加えた。組織はアジャイル開発の要素のうち、取り入れる価値のあるものだけをつまみ食いし、それを従来型のアプリケーション開発の方法論と組み合わせればよく、それでも効果は大きいのだという。