一方、Windows 8以外のモバイルOSでは、それほどの難しさを感じない。その理由は単に、そういったモバイルOSがタッチ操作しかサポートしていないためだ。これらのOSはトラックパッドやマウスを装備したモバイル機器上での稼働を想定していないため、設計時点から各種の入力手段を考慮する必要がないのである。サポート対象をタッチスクリーンのみに限定すれば、ユースケースに制約が加わるものの、ユーザーにとって話は簡単になる。
UX設計における第1のルールをまとめると、サポート対象の操作のあらゆる側面は自然に感じられるだけの直感性を有していなければならないというものになる。ユーザーはモバイル機器の電源を入れた後、UIコントロールについて考えをめぐらせずとも作業を始められるようになっているべきなのだ。それ故に、こういったコントロールは直感的に操作できるようになっていなければならないのである。単純な作業を実行する時であっても、その方法を見つけるために常に立ち止まって考えなければならないシステムを使用するというのは、不自然極まりないはずだ。
一貫性が鍵となる
自然で直感的なUXを生み出すには、よく利用するシステムコントロールの操作に一貫性を与えることが重要となる。さまざまな入力手段を扱うには、単一タスクの実行にも複数の方法を用意する必要が出てくる場合もあるものの、そういったものはすべて同じように操作できなければならない。
例えば、タッチスクリーンを使用する際に、マウスとまったく違った操作が必要になる場合、UXに悪影響が及ぶ。つまり、ユーザーは1つの作業に対して2つの違ったやり方を学ばされるのを重荷に感じるため、設計上の優れた選択肢とはなり得ないのだ。ユーザーはそうした思いを抱くと、UX全体対してに悪い印象を持ってしまうわけである。
システム操作に一貫性が欠けている場合、UXにどのような影響が及ぶのかを示す好例として「Android OS」における「戻る」ボタンがある。このボタン(物理ボタンやソフトボタン)は、Android OSの設計に組み込まれているため、同OSを搭載したあらゆる携帯電話やタブレットで使用できるようになっている。このためユーザーは同ボタンをタップするだけで、少なくとも理論上は、直前にオープンしていた画面に戻れるようになっているわけだ。
これは一貫性の定義に沿っているように聞こえる。このボタンはあらゆるAndroidデバイスに存在しており、ユーザーは常に利用できる。しかし、その実装は一貫性とはほど遠いものとなっている。戻るボタンはたいていの場合、期待通りに動作し、該当アプリでオープンしていた直前の画面に戻る。だが、アプリ内の直前の画面ではなく、Androidのホーム画面に戻ってしまう場合もある。その結果、ユーザーの思考は停止してしまう。これでは優れたUXとはとても言えない。こんな場合には、戻るボタンを押しても何も起こらない方がましだろう。
優れたUXでは、アプリとOSの双方における入力手段全体を通して一貫性がもたらされている。ユーザーはアプリ内でもホーム画面と同じタッチ/マウスジェスチャーを使用できるようになっているべきだ。こういった一貫性によって、優れた、そして自然なUXが実現されるのである。