Gartner Summit

日本企業は遅れているWindows 10移行--ガートナーの助言

末岡洋子 2018年05月16日 07時00分

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 「日本企業のWindows 10への移行は世界よりも遅い。少し急いだ方がいい」ーーガートナー ジャパンの主席アナリスト、針生恵理氏は4月25日、都内で開催された「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション・マネジメント&データセンター サミット 2018」でこのようにアドバイスした。その理由は単に、「Windows 7」のサポート期限が迫っているだけではない。サービス型というWindows 10の特徴にある。

 2015年に登場したWindows 10、Microsoftの最新、かつ”最後のWindows”とも言われるものだ。針生氏によると日本企業で移行を進めている企業は3割、これは世界の平均である7割に比べると低い比率となる。

 Windows 7のサポート終了が2020年ということもあり、2017年後半からWindows 10への移行が加速しており、「2018年は一気に進むだろう」とみるが、もしこれから検討するという企業があるなら「ちょっと急いだ方がいい」と針生氏はいう。


日本企業のWindows 10への移行は遅れている。

 背景にあるのは、2年後に迫るWindows 7のサポート終了だけではない。WIndows 10はこれまでのOSとは全く異なる”サービス型”という特徴を持つからだ。

 サービス型OSを説明するにあたって、針生氏はMicrosoftの戦略変換を次のように説明した。「これまでは主力のWindowsを中心に戦略を立て、Windowsがどこでも動くことを目指してきた。数年前から、あらゆるデバイスでMicrosoftのサービスを動かすということを重視する戦略になった」(針生氏)。

 このようなMicrosoftの新しい戦略は、「製品をオンプレミスではなくサービスで提供する」(Microsoftのソフトウェアが動く)、「デバイスの幅が広がる」の2つの意味があると針生氏は説明する。

 MicrosoftがWindows 10で導入したSAC(Semi-Annual Channel:半期チャネル)は、この戦略変換を具体的に示すものとなる。

 SACは年に2回、機能アップデートが繰り返されるものだ。Microsoftはより固定的な環境を求める顧客に対して、LTSC(Long-Term Servicing Channel)を提供するが、LTSCへの制限が増えつつある。「Surface Pro」ではLTSCをサポートしない、「Office 365」でのサポートがないなどの制限が増えたことで、SACを選ばざるを得ない状況だと針生氏は説明する。

 SACのアップデートはリリース後18カ月のサポート期間があり、その間にテスト、パイロット、導入を済ませなければならない。それぞれに4カ月かけている場合、すぐに1年が経過してしまう。針生氏は”個々のアップデートをスキップ(飛ばす)できるのか”という質問をよく受けるというが、これについても、「スキップしたいなら現在のアップデートのプロセスを短期化しないと難しい」と述べる。

 なお、2018年2月にエンタープライズ版ではサポートを延長できることが発表されたが、「サポート方針はよく変わるので、常に最新情報を確認する必要がある」と付け加えた。


Windows 10のSACはテスト、パイロット、導入の作業を短期化する必要があり、「プロジェクトではなくプロセス」という。

 「限られた期間内にいかにアップデートのためのテストを効率化させるか、配信方法をどうするか。SACを選択した企業の課題となっている」と針生氏。そして「Windows 10への移行は、一度やれば終わりの”プロジェクト”ではなく、アップデートを繰り返す”プロセス”になった」と考え方を変える必要があることを強調した。これはIT担当だけではなく、アプリや予算の担当者も関係してくるという。

 針生氏は講演中、テスト効率化のヒントも紹介した。キーワードは「絞り込み」と「リスク緩和」で、ビジネスへの影響どとユーザーの数の2つの指標でシステムをマッピングし、最も重要なシステムからテストを行っていくというものだ。これにより、最も重要なシステムの検証はできた形で移行を進めることができる。

 だが全てのシステムの検証作業が終わらない可能性もある。そこで、リスク緩和となる。例として、一斉に配布するのではなく段階的に配布する、途中でエラーが起きたらいかに修正するか、再配布するかなどの体制を作っておくのも手だと助言した。

 このような絞り込みとリスク緩和の両輪を進めながら、仮想環境の利用、テスト自動化、互換性検証の最適化などの次の手を考えると良い、と針生氏は続ける。中でも自動化では、RPA(Robotic Process Automation)ブームも後押しして、テストをパターン化させてそれを記録して自動化することを試す企業が出てきているとのことだ。

 まずはWindows 10への移行に着手していない企業は始めるべき、これが針生氏の最大のメッセージだ。

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